[O68-4] 外科系集中治療室入室患者に対する早期離床リハビリテーションの効果
【背景】近年、術後呼吸・循環合併症や術後せん妄予防等の目的で早期離床が推奨されている。当院の外科系集中治療室(SICU)では以前、FAST TRACKに基づく離床基準に準じて心臓血管外科手術後の早期離床プロトコルを作成し、運用した実績からその有用性を検証した。今回、2018年5月からの早期離床リハビリテーション加算算定開始を機に、これを改変して全疾患に適応可能な早期離床プロトコル(プロトコル)として作成し、現在ではこのプロトコルでSICU入室全患者のリハビリテーションを行っている。なお、その大きな変更点はバイタルサインの許容範囲を拡大した点にある。【目的】プロトコルの有用性を、その導入前後で比較し、後方視的に検証する。【方法】本研究は広島大学病院倫理委員会の承認を得て行った。対象はプロトコル導入前の2017年5月からの3ヶ月間(A群)および、導入後の2018年5月からの3ヶ月間(B群)にSICUに入室した患者とした。除外基準は、死亡退室、同日退室、16歳未満、安静度制限とした。評価項目は患者背景因子として年齢、性別、BMI、入室前活動度、ASA分類、APACHE 2 score、疾患分類(呼吸器系、循環器系、脳神経系、消化器系、筋皮膚系、泌尿器生殖系、その他)、主要アウトカム評価として入室中活動度(ICU Mobility Scale: IMS)とした。IMSは入室中の最高の活動度を11段階で評価した。統計学的解析は、対応のないt検定、Mann-WhitneyのU検定、χ2検定を用い、有意水準は5%未満とした。数値は中央値[最小値-最大値]で表記した。【結果】該当期間の対象患者のうちA群は105名、B群は127名であった。患者背景因子では、APACHE 2 scoreでA群が20[11-32]、B群が24[17-37](P<0.001)とB群で有意に高い結果であったが、それ以外の項目では有意差を認めなかった。また、入室中IMSはA群が4[0-10]、B群が6[0-8](P<0.001)でB群が有意に高かった。【結論】全疾患に対する早期離床のために作成した本プロトコルは重症患者にも施行可能であり、SICU入室中のIMSを向上させうる可能性がある。