[O69-2] 急性心不全による心腎症候群が早期離床および日常生活活動低下に与える影響
【背景】急性心不全により急性腎障害(AKI)をきたす心腎症候群(CRS type1)は、生命予後に悪影響を及ぼす重篤な病態であり、集中治療室滞在日数の延長や自宅退院率の低下が報告されている。CRS type1を呈する急性心不全患者は、集中治療室からの早期リハビリテーション(早期リハ)が阻害され、退院時の日常生活活動(ADL)低下リスクが高い可能性が考えられる。【目的】CRS type1を呈する急性心不全患者の早期離床の実施状況およびADL低下に対する影響を検討する。【方法】2013年3月から2018年3月の間に急性心不全または慢性心不全急性増悪により当院に入院加療し、早期リハを実施した1008例(男性56%, 年齢77±13歳)を対象とした。Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)のAKI基準に準じて入院後48時間以内に血清クレアチニン(SCr)値が≧0.3mg/dl上昇または入院1か月以上前のSCr値を基礎値とし、入院後7日以内に基礎値より≧1.5倍の増加となった場合をCRS type1とし、CRS type1群(男性53%, 79±13歳)とnon CRS type1群(男性56%, 77±13歳)に分類した。なお、除外基準は入院時クリニカルシナリオ4および5に該当した症例、入院前からの血液透析療法導入症例とした。ADL はBarthel Index(BI)を用いて測定した。心不全症状が出現する入院前のBIに比べて、退院時BIが5点以上低下した場合を退院時ADL低下と定義した。入院後48時間以内に立位が可能であった早期離床実施割合、ADLの推移について二群間で比較検討した。また、ロジスティック回帰分析にて退院時ADL低下の危険因子について検討した。【結果】CRS type1群は139例(14%)であり、non CRS type1群に比べて集中治療室滞在日数が有意に高値であり(6.5±7.0 vs. 4.5±4.8日, p<0.05)、早期離床実施割合(59 vs. 73%, p<0.01)は有意に低値であった。二群間において入院前BIには有意差を認めなかったが(92±18 vs. 94±14点, p=0.21)、CRS type1群は、non CRS type1群に比べて退院時BIが有意に低値であり(88±22 vs. 92±19点, p<0.05)、退院時ADL低下割合が有意に高値であった(23 vs. 12%, p<0.01)。また、ロジスティック回帰分析の結果、CRS type1は退院時ADL低下の独立した危険因子であった(OR: 1.915, 95%CI 1.066-3.442, p<0.05)。【結論】心不全入院患者において、CRS type1は早期離床が阻害されやすく、退院時ADL低下の独立した危険因子であった。