第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O71] 一般演題・口演71
リハビリテーション08

2019年3月1日(金) 17:40 〜 18:40 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:水 大介(神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター)

[O71-1] 多職種で方針を共有して離床に挑み、自宅退院出来たフレイルチェストの一症例

岡田 進太郎, 高田 順子, 増田 早苗, 松村 基子, 永谷 創石, 片岡 惇, 三枝 邦康, 則末 泰博 (東京ベイ浦安市川医療センター)

【はじめに】フレイルチェストを伴う多発肋骨骨折に対するリハビリ報告は希少である。また、肋骨骨折の本数増加と死亡率・肺合併症は相関し、体動に伴う突出した肋骨骨折片による下行大動脈損傷の死亡例も報告されている。今回、多職種で問題点や目標を共有して離床が進んだ重症例を経験したので報告する。【症例】社会生活自立した51歳男性。仕事中、機械に腕と左胸を巻き込まれて受傷し、ショック状態で当院に救急搬送された。左多発肋骨骨折(第1-11肋骨骨折)によるフレイルチェスト、左血気胸、左上肢離断の診断となり、胸啌ドレーン挿入、気管挿管・人工呼吸管理が開始され、ICU入室となった。フレイルチェストを伴う多発肋骨骨折については保存的加療の方針となり、第3病日に理学・作業療法を開始した。【経過】第3病日の初期評価として、挿管管理中だが意識は清明、左前胸部の疼痛はNRS5以上、左肩屈曲40度の可動域制限、筋力はMRC合計44点(左肘以遠は推定値)、寝返り全介助であった。第4病日に経皮的気管切開術・左上肢切断術、および持続的硬膜外麻酔が施行された。その後離床を計画・実行しようとしたが、気管切開チューブの刺激で咳嗽と嘔気が生じ、それに伴い左前胸部の疼痛が増して離床が難航した。そのため第15-18病日に医師・看護師・リハビリでの多職種によるカンファレンスで協議し、1「動作時の気管切開チューブの刺激による咳嗽と嘔気」に対し人工呼吸器離脱を優先、2「左前胸部痛」に対し離床前の鎮痛剤を増量、3「内臓損傷の予防」に対して起き上がり・端坐位は医師または診療看護師を含む5人体制で、シーツで体幹を支える介助方法で統一、4「不安」に対して翌日の目標を事前に説明する、という4点を検討し方針を共有した。第18病日に人工呼吸器を離脱し、10分の端座位保持が可能となった。第21病日に立位・足踏み練習を開始し、第23病日に気管切開チューブを抜去し、歩行練習を開始、第25病日に室内歩行が自立となり、第40病日に独歩で自宅退院となった。最終評価として、独歩・階段昇降は自立、6分間歩行距離330m(SpO296%)、持久性約5Mets、ADLはFIM90/126点、肺機能検査では%肺活量50.1%、1秒率85.8%であった。【考察】本症例はフレイルチェストを伴う多発肋骨骨折に対して保存的加療を選択するも、多職種で問題点を相談し方針を共有することで、合併症を回避しながら離床を進め、早期に独歩自宅退院が出来たと推察する。