[O71-3] 創傷治療と並行した早期から上肢機能練習が有効であった前腕コンパートメント症候群・熱傷例―症例報告―
【背景】コンパートメント症候群は、診断と治療が遅れると神経・筋の虚血性壊死により重大な機能障害を残す。そのうち、前腕コンパートメント症候群は下腿に比べて発生頻度が低いことが知られている。また、コンパートメント症候群に併発した熱傷は、神経・筋・皮膚の要因から、その治療介入には難渋し、後療法としてリハビリテーション介入方法・効果について報告が乏しい。【目的】前腕コンパートメント症候群・熱傷を呈した症例に対して、早期から関節可動域練習・筋力強化練習を行い、実用手獲得を図れたためその介入方法と効果について報告する。【臨床経過】症例:50歳男性、診断名は右上腕骨遠位端開放骨折、右第4指中手骨開放骨折、右前腕コンパートメント症候群、右前腕熱傷。現病歴:機械に前腕を巻き込まれ受傷.第2病日目から作業療法を開始した。初回評価:関節可動域は肘関節屈曲40度、伸展0度、手関節・手指はシーネ保護中であったため未評価。筋力は三角筋・浅指屈筋・深指屈筋はMMT4、その他の筋はシーネ保護中であったため評価困難。感覚は脱失を認めないが全指にしびれを認めていた。治療戦略:治療介入にあたり、シーネ保護下での不動期間の増加で拘縮進展、介入時間が必要練習量に達しないことが予想された。そのため、担当医・病棟看護師と時間調整を行い、前腕処置に同席し、シーネ解除下にて関節可動域練習を行い可動域の確保を図る、1日2回の介入とし介入時間の確保を行うことを治療戦略の主とした。治療経過:第6病日目から介入方法を調整。第13病日目から手指操作練習を開始。その後、前腕の植皮術を経て、第56病日目に自宅退院の運びとなった。最終評価:他動関節可動域は肘関節屈曲110度、伸展0度、手関節屈曲70度、伸展70度。筋力は、MMTにて手関節屈曲筋群・背側骨間筋は3、掌側骨間筋は2、その他の筋は4レベルであった。STEF(簡易上肢機能検査)は右89/100点、左98/100点。食事動作、書字動作を獲得しADL場面では実用手獲得が図れた。【結論】創傷処置時に関節可動域練習が開始できたことで可動域制限の予防が図れた。創部の重症度から筋力強化に難渋し筋力低下が残存した可能性がある。創傷治療が優先される急性期治療期間のリハビリテーション介入時間・介入方法の充実には、医師・看護師との連携が重要である。