[O71-5] 敗血症にて心肺停止となった先天性ミオパチー患者のリハビリテーション経験~集中治療室から在宅復帰まで~
【背景】先天性ミオパチーは骨格筋の先天的な構造異常により乳幼児期から筋力、筋緊張の低下を示す疾患である。心合併症や肺合併症などを起しやすく、それを契機に急激に筋力が低下しやすい。小児期では短期間で回復することが多いと報告され、小児科医の間ではよく知られている。しかし、成人についてのリハビリテーション(以下リハ)長期経過の報告は少なく、その転帰はほとんど知られていない。今回、先天性ミオパチーを基礎疾患に持ち、敗血症による多臓器不全にて心肺停止となった症例を担当し、177病日で在宅復帰できた経験をしたため報告する。【臨床経過】症例は40歳代男性、小児期に先天性ミオパチーと診断されたが日常生活に支障がなく、通院を自己中断されていた。X年Y月Z日、心肺停止で救急要請、ドクターヘリが出動し、自己心拍再開した状態で当院に搬送された。肺炎による呼吸不全を原因とした心肺停止の診断で、同時に肝不全、腎不全もきたしており、集中治療室で人工呼吸器、持続血液透析濾過法の管理を行った。元々、呼吸筋が弱いため人工呼吸器離脱が難しく、また腎機能の改善も認めず、維持透析を継続した。集中的治療の結果、全身状態は安定した。第23病日に集中治療室を退室したが、廃用の進行が速く、寝たきりの状態であった。回復期リハ病院への転院は、人工呼吸器・透析が必要な点で受け入れ先がなく、第60病日時点で、日常生活動作(以下ADL)自立の目途は立たず、家族からは療養型病院転院の希望があった。しかしその後、緩徐に運動機能改善、ADLの拡大がみられ家族から在宅復帰に対する思いが聞かれるようになった。急性期病院ではあるが在宅復帰を目標に長期のリハを当院で行った結果、第134病日で、車椅子移乗、物的介助での立位、2人介助での平行棒内歩行ができ、人工呼吸器は夜間のみの使用までに回復した。第177病日、食事摂取、排泄が自立し、歩行器歩行にて自宅退院に至った。【考察】本症例は基礎疾患に先天性ミオパチーを有しており、健常者と比較して運動機能、ADLが急激に低下し、経過から機能的予後は車椅子でのADLと予測していた。本症例では長期の回復期間を要したが歩行の獲得、人工呼吸器の日中離脱、在宅復帰が果たせるまでに回復した。小児よりも緩徐ではあるが本疾患特有の回復過程を観察しえた。健常者と同じスケールで予後予測を行うと過小評価につながるため、特徴を考慮した方針決定をすべきである。