[O72-2] 侵襲時急性期の間接熱量測定による代謝動態の検証
【背景】侵襲下では代謝亢進,異化亢進があり体構成成分の消耗が進行する.それに対する栄養投与エネルギーは,消費エネルギーを推定した上で決定される. 消費エネルギーは主に簡易推算式25kcal/kg/dayが用いられている.本邦ICU症例で,急性期どの程度の代謝亢進・変動がみられるか,どのようなエネルギー投与が望ましいかの検討はない.【目的】侵襲下6日以上挿管呼吸管理を行った症例を対象(蘇生後脳症,熱傷,外傷は除く)とした.入院時から継続して消費熱量を間接熱量計(IC)で測定し,挿管初日から抜管までの消費熱量を連続的に計測した.その結果から,急性期の消費熱量の推移から代謝亢進の実態,また簡易推算式を用いた急性期栄養療法の妥当性を検討する.【症例のまとめ】期間;2016.04-2018.03.症例数;40名(F;10).年齢;74±11.5歳.BMI;21±4.2[最大値30,最低値15].挿管(測定)期間;8.8±3.22日.原疾患;肺炎15例,心不全6例,消化管穿孔6例術縫合不全4例,敗血症3例,その他の順 .入院時栄養評価;高度障害14名(35%) ,中等度22名(55%),良好4名(10%),APACH II;23.3±7.77.予後;ICU内死亡8名(20%).測定全体の平均;23.6±7.73 kcal/kg(BW)/day (延べ346日).入室時CI; 22.3±7.59kcal/kg(BW)/day[最大値51.0,最小値11.6 kcal/kg(BW)/day].抜管直前CI;22.7±6.71kcal/kg(BW)/day[最大値46.6,最小値14.8 kcal/kg(BW)/day].症例別測定期間の日間最大変動比較:≦25%;35%,25<≦50%;38%, 50<≦75%;20%, 75<≦100%;20%,100%<;8%. BIMと症例毎の全測定値平均には負の相関(r=-0.52)があり,BMI(x)から消費熱量(y)を予測する単回帰分析はy=-0.74×x+39.3(p<0.01)となる.【結論】重症症例における初期投与エネルギー量は, overfeedingの回避を主眼として設定される.その根拠となる臨床研究の対象は,年齢65歳,BMI28程度である.当院ICU症例はより高齢,痩せであり,栄養評価の結果からもhigh nutritional risk症例が多数を占める.簡易推算式は今回の検討で,全IC値の平均とは合致する.また挿管時と抜管時のIC値平均は同等であり明確な侵襲下代謝亢進は確認できない.しかし,症例間の比較では約4倍程度の消費熱量の差異を認めた.回帰分析からは,痩せ症例ほど消費熱量は高値となる.以上から当院では栄養障害症例では,早期経腸栄養開始3日目にIC値の80%,1週目に100%に近似させるエネルギー投与を安全に実施している。患者個別性を考慮した栄養療法が重要である.