[O73-1] 【優秀演題(口演)】血漿シトルリン濃度は、重症長期低栄養患者の腸管機能の忍容性の評価に有用である
長期低栄養患者の栄養管理では、refeeding syndromeの予防が重要であるが、最適な再栄養療法を決める無作為化試験はまだない。経腸栄養(EN)は頻用されるが、重症長期低栄養患者は腸管合併症を認め、再栄養開始時に、腸管機能の忍容性が不明であることが多い。血漿シトルリン濃度は、消化管手術における残存小腸や短腸症候群における小腸機能のバイオマーカーである。我々は血漿シトルリン濃度が重症長期低栄養患者においても腸管機能を反映すると仮説を立てた。今回、3例の重症長期低栄養患者を振り返り、血漿シトルリン濃度が腸管機能の忍容性の指標として有用であるかを検討した。症例1: 4歳女児 極度飢餓に対する栄養管理目的でICU入室。身長88cm、体重8kg、るいそう著明。ICU入室時に挿管下で間接熱量計のエネルギー消費量を測定、これを参考に、電解質モニタリングをしながらEN主体でカロリーを徐々に増量した。EN増量に伴い、大量下痢が持続したため、入室12病日よりENを中止、経静脈栄養(PN)主体に変更した。入室時のシトルリン濃度は測定感度以下(基準値:17.1-42.6nmol/mL)であった。その後、PNの増加で全身状態は改善、シトルリン濃度は9.2nmol/mLと増加した。ENを再開し、下痢の増悪なく、入室50病日にICU退室。症例2: 18歳女性 BMI11.7 神経性食思不振症で入院中に肺炎を合併し、全身管理目的でICU入室。入室時シトルリン濃度は10.4nmol/mLと軽度低下。EN主体にカロリーを徐々に増加した。しかし、入室32病日に大量下痢が出現、シトルリン濃度は測定感度以下であった。腸炎を疑い、治療するも入室50病日に全周性腸管粘膜脱落を認めた。シトルリン濃度は低下したままであった。腸からの栄養吸収は困難と考え、PN主体に変更した。その後、シトルリン濃度は11.2nmol/mLと増加を認めた。入室93病日よりENを再開し、下痢の増悪なく、入室100病日にICU退室。症例3: 23歳女性 BMI 10.7 神経性食思不振症の加療に難渋し、肝・腎機能障害を認めたため、全身管理目的でICU入室。入室時のシトルリン濃度は20nmol/mLと基準値内であった。ENは少量で維持しながら、PN主体でカロリーを増加した。シトルリン濃度は維持されていた。入室11病日よりENを増量し、下痢など認めず、入室13病日にICU退室。まとめ:血漿シトルリン濃度は、重症長期低栄養患者においても腸管機能を反映していると考えられ、腸管栄養の忍容性の指標として有用である可能性を認めた。