第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 研究

[O76] 一般演題・口演76
外傷・熱傷 研究03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:40 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:清水 敬樹(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[O76-4] 重症頭部外傷治療における搬入時D-dimer値の意義

大貫 隆広1,2,3, 三宅 康史1,2, 坂本 哲也1,2,3 (1.帝京大学 医学部 救急医学講座, 2.帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター, 3.頭部外傷データバンク検討委員会)

【背景】搬入時D-dimer(以後DD)値(μg/ml)は線溶亢進の指標であり、外傷の重症度や予後に関連すると考えられるが、十分に定量化されてはいない。また重症頭部外傷治療において、線溶亢進の有無により初回手術方式の選択が必要であるとの議論があるが、コンセンサスは得られていない。【目的】重症頭部外傷症例の搬入時DD値と予後の関連を、最新版であるJapan Neuro Trauma Data Bank (JNTDB) p2015登録症例を用いて検討した。また、DD値と年齢から予測される予後により層別化した各群で初回手術方式と予後についても検討する。【方法】 JNTDBは、全年齢の、搬入時GCS8以下、72時間以内にGCS8以下になった、あるいは脳外科手術実施(ICP測定含む)した頭部外傷の全国規模の症例登録である。登録1345例から、搬入時心肺停止症例、Trauma and Injury Severity Score(TRISS)算出不能症例、頭部のabbreviated injury score(AIS)不明症例、DD値不明症例、多部位外傷症例、総搬送時間が1時間を超えた症例を除き、退院時予後(死亡、modified ranking scale(mRS))との関係を検討する。死亡およびmRS>3をアウトカムとするロジスティック回帰分析を行った。さらに、急性硬膜下血腫有り、DD10以上の症例を、DD値と年齢で4群に層別化し、初回手術が穿頭(P)か減圧開頭(D)かで、予後を比較した。【結果】分析対象は336例。死亡率は32%。搬入時の血液凝固検査で生存(A)、死亡(D)の2群間で有意差を認めたのは、DD値(A33.76 vs D135.65)とPTINR値(A1.07 vs D1.24)であった。ロジスティック回帰分析では、年齢、GCS、DDが退院時死亡と有意に関連していた。ROC曲線にて退院時死亡に対するDDのカットオフ値を求めたところ69.35であった(AUC 0.77)。急性硬膜下血腫有り、DD10以上の症例を次の4群(a; 65歳未満DD<70、b; 65歳未満DD>=70、c; 65歳以上DD<70、d; 65歳以上DD>=70)に分けてとP群とD群で検討した。各群の死亡率は、a(P40%vsD13%)、b(P33.3%vs31.6%)、c(P66.7%vsD14.3%)、d(P80%vsD85.7%)であった。予後不良(mRS>3)率は、a(P60%vsD43.3%)、b(P83.3%vs100%)、c(P100%vsD84.2%)、d(P100%vsD100%)であった。【結論】重症頭部外傷において、搬入時D-dimer高値および高齢症例は,治療にかからず予後不良であった。D-dimer高値の場合、開頭減圧術が必ずしも予後改善に有利ではなく、侵襲の少ない穿頭術が選択肢の一つとなりうることが示唆された。