第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 研究

[O76] 一般演題・口演76
外傷・熱傷 研究03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:40 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:清水 敬樹(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[O76-5] Acute traumatic coagulopathyに対するクリオプレシピテートの効果と限界

丸地 佑樹, 寺島 嗣明, 富野 敦稔, 大石 大, 加藤 祐将, 竹中 信義, 森 久剛, 梶田 裕加, 津田 雅庸, 武山 直志 (愛知医科大学病院 救命救急科)

背景:大量出血によるAcute traumatic coagulopathy(以下ATC)は線溶亢進と凝固因子の消費による凝固機能の破綻により出血傾向を呈する病態である。一度ATCに陥ると止血機能の改善は容易ではない。クリオプレシピテート(以下クリオ)は、FFPを緩徐に融解して得た沈殿分画で、フィブリノゲン、凝固第VIII因子、フォン・ウィルブランド因子、凝固第XIII因子、フィブロネクチン、血小板マイクロパーティクルを多く含有する製剤である(B. Nascimento; BJA, 2014)。クリオは、FFPに比べ迅速に融解でき、短時間で高濃度の凝固因子を補充することができる製剤であるが、院内作成に4日間を要するため常備している施設は限られる。当院ではFFP12単位分をクリオ1セットとして常備しており、フィブリノゲン(以下Fib)150mg/dl以下でATCの疑われる外傷患者を中心に使用している。目的:クリオの効果と限界を検討すること。 方法:対象は、2015年5月から2018年7月の間にクリオを投与した外傷患者20例で、24時間予後と28日予後を評価項目とし、SPSS ver 25を用い後ろ向きに統計解析を行った。 結果:受傷24時間死亡は4例、28日死亡は9例であった。予後は、年齢、性別、受傷機転、損傷機転、転院の有無、ドクターヘリの有無、ISSで差を認めなかった。経過中心停止を呈した患者、RTS低値患者で有意に死亡が多かった。蘇生的開胸術とREBOA例で有意に24時間死亡が多かったが、28日死亡には有意差を認めなかった。手術、IVR、輸血量に差はなかった。24時間後のFib最高値は、24時間死亡患者で有意に低かった(生存群282.2mg/dl、死亡群118.5mg/dl、p=0.001)。24時間後のFib最低値(生存群118.8mg/dl死亡群47.78mg/dl、p=0.006)、Fib最高値(生存群300.4mg/dl、死亡群196.1mg/dl、p=0.010)、PT-INR(生存群1.98、死亡群5.19、p=0.001)、APTT最高値(生存群68.06秒、死亡群152.3秒、p=0.002)、最低体温(生存群35.6度、死亡群34.1度、p=0.010)、搬入時pH(生存群7.28、死亡群7.11、p=0.046)は、28日死亡患者で有意に異常値を認めた。結論 :重症外傷患者におけるクリオ投与の効果は、外傷の解剖学的重症度ではなく、生理学的指標の影響を受けていた。クリオ投与にもかかわらず予後の悪かった症例はATCの悪化をはじめとした外傷死の三徴を認めていた。今後は、クリオ投与による凝固能改善効果の乏しい症例に対する新たな治療戦略の構築が必要である。