第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 症例

[O77] 一般演題・口演77
外傷・熱傷 症例01

Sat. Mar 2, 2019 2:40 PM - 3:20 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:山口 均(一宮市立市民病院救命救急センター)

[O77-2] 神経学的異常から発見された脂肪塞栓の一例~脂肪塞栓は正しく診断されているのか~

佐藤 満仁, 野坂 英樹, 崔 權一, 堂籠 博, 佐藤 圭路 (米盛病院 救急科 集中治療部)

【背景】脂肪塞栓は多発外傷、骨折後に認める重篤な合併症で頻度は0.3~3.3%とされるが、実際の臨床で遭遇することは少ない。【症例】22歳男性、16時頃バイク運転中に対向車の車両と衝突し受傷した。右大腿部変形、両手指の変形、挫創があり当院へ救急搬送となった。来院時意識清明で受傷時の健忘もなく、バイタルサインは安定していた。画像検査施行し、頭頸部、体幹部には特記所見を認めず、右大腿部骨幹部骨折、左母指・示指中手骨、右母指・示指・中指基節骨の骨折を認めた。右母指基節骨については開放骨折であり創処置、骨折の固定のため緊急手術となった。大腿骨骨幹部骨折は十分なインプラントがなく創外固定施行し、手指については創洗浄、ピンニング施行し手術終了とした。【臨床経過】手術後はICUに入室しフェンタニルの持続投与、輸液、酸素投与を行い、意識清明で特にバイタルサインの変動は認めなかった。入院2日目10時観察時意識レベルは問題なかった。12時頃家族面会の際に意識障害を認めた。診察時はSpO2 94%(O2 3L)、GCS 9(E3V2M4)、前胸部の皮疹を認め、頭部MRI DWIで多発する高信号領域を認めた。呼吸不全、意識障害、点状出血を認め、臨床経過から脂肪塞栓と判断した。脳塞栓についてはエダラボン投与し、右大腿骨骨折については早期内固定が適切と判断し、入院5日目に骨折的観血術施行した。その後呼吸状態や意識状態は徐々に改善し、意識清明となり、リハビリ加療を行い転院となった。【考察】脂肪塞栓では3徴とされる呼吸不全や意識障害、点状出血を認めるが、3徴全て認めることは少なく、また非特異的な症状であり、確定診断は困難である。本症例では3徴全て認めたことで鑑別に挙がり、画像所見から診断した。当院は鹿児島市にある中規模の民間病院であるが、前身が整形外科病院であり、骨折症例を多数経験している。2014年9月に開院し、2018年7月までの3年10か月で9200例以上の骨折症例を経験し、長管骨に限っても3600例以上ある。当院での脂肪塞栓症例は初であるが、脂肪塞栓の頻度は長管骨でも0.9~2.2%とされ、当院であれば30例以上発生している割合となり、正確に診断されていない可能性が高い。特に高齢者の軽度の呼吸不全や意識障害であれば、誤嚥性肺炎や認知症、せん妄などと認識されている可能性がある。骨折後に呼吸不全、意識障害を認めた場合、本疾患を考慮すべきであり、若干の文献的考察を含め報告する。