第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 症例

[O77] 一般演題・口演77
外傷・熱傷 症例01

Sat. Mar 2, 2019 2:40 PM - 3:20 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:山口 均(一宮市立市民病院救命救急センター)

[O77-4] 鈍的胸部外傷の約1ヶ月後に再建食道穿孔を来たした1例

竪 良太, 鶴 昌太, 平松 俊紀, 小西 良一, 安達 普至 (飯塚病院 集中治療部)

【背景】鈍的外傷による食道穿孔は稀な病態であり、その発生頻度は鈍的外傷のうち0.1%以下とされる。外傷性食道穿孔、特に胸腔内の穿孔においては特異的な症状を認める事は少なく、敗血症を合併するまで診断が困難である。発症してから日にちが経過するほど、穿孔部の壊死・脆弱化し、閉鎖後の縫合不全が起こりやすいため、早期発見が重要である。今回珍しい機序で外傷性食道穿孔を来たした1例を経験したため報告する。【症例】70代男性。6年前に他院で食道癌に対して胸腔鏡下・腹腔鏡下食道亜全摘胃管再建術(後縦隔再建)を施行された。当院来院約1ヶ月前に自宅の階段で転落し、左半身を打撲し、近医に救急搬送された。頭部CT、胸部レントゲン検査で異常なく帰宅した。受傷後から左側胸部痛があったが、鎮痛薬で経過していた。来院当日安静時に右側胸部痛が出現し、前医を受診し、右外傷性血気胸、左外傷性血胸、両多発肋骨骨折を認め、酸素化が不良であったため当院に紹介搬送となった。CTで右背側肋骨骨折と再建胃管の著明な拡張を認めた。ICU入室後に気管挿管・人工呼吸器管理とし、両側胸腔にドレーンを留置した。入院3日目に血液検査で炎症反応の上昇があり、胸水検査から膿胸と診断した。呼吸状態は改善し、入院4日目に抜管し、5日目にICUを退室した。退室後に胸腔ドレーンの排液への経管栄養の混入が疑われ、10日目に消化管造影検査で胃管胸腔瘻と診断した。入院12日目に胃管胸腔瘻閉鎖術を施行した。来院時のCTで再建胃管が肋骨の骨折片の近傍にあり、骨折片により鋭的損傷を来たし、膿胸を発症したと考えた。来院当日に右側胸部痛が出現しており、その際に食道穿孔を発症したと判断した。【結語】胸部外傷で生じた肋骨骨折片により遅発性に、しかし急性に再建食道の穿孔を来たした稀な症例を経験した。発症してからは比較的早期に診断できたが、発症機序の解釈に苦労した。