第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 症例

[O77] 一般演題・口演77
外傷・熱傷 症例01

Sat. Mar 2, 2019 2:40 PM - 3:20 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:山口 均(一宮市立市民病院救命救急センター)

[O77-5] 高齢者の重症胸部外傷において早期気管切開が有用であった1症例

辻 紘明, 中村 健太郎, 池上 直矢, 原 純 (鹿児島県立大島病院)

【背景】高齢者の胸部外傷は、疼痛による排痰困難やADL低下、長期間の挿管による人工呼吸管理では肺炎などの呼吸器合併症や長期臥床によるADL低下が起こりやすく、治療に難渋することが多い。【臨床経過】84歳女性。1mの高さの側溝へ転落して右胸部打撲したが自力歩行で自宅まで帰宅可能であった。疼痛が強いため当院へ救急搬送となった。救急隊接触時、room airでSpO2 85%であり酸素投与を開始された。救急外来到着時の動脈血液ガス検査では、リザーバー付酸素マスク 10L/min下で低酸素血症を認めた。単純CT検査で右鎖骨骨折、右肩甲骨骨折、右多発肋骨骨折、右血気胸を認めた。救急外来では、循環動態安定、奇異性呼吸なく、酸素投与のみで呼吸状態安定していたためドレーン留置や挿管は行わず入院となった。胸部外傷はISS 18点、PS 0.93。入院後約2時間後に収縮期血圧 66mmHg、Hb 7.7 g/dlと出血性ショックとなり、輸液・赤血球輸血・新鮮凍結血漿投与を開始して改善傾向となった。2回目のCT評価で血胸増加しており動脈塞栓術を検討したが、術後の脊髄虚血の合併症を考慮して保存的治療を選択した。第2病日、奇異性呼吸がありフレイルチェストを合併していた。人工呼吸器管理による陽圧換気が必要であり、気胸も合併していたため胸腔ドレーン挿入を行った。輸液・輸血後も循環動態不安定であり、3回目のCTで血胸がさらに増加傾向のため、止血術が必要であった。動脈塞栓術による脊髄虚血の合併症を避けるため開胸術での止血を行う方針となった。また、長期間の人工呼吸器管理となるため気管切開術も行った。術後はフェンタニルの持続点滴静注及び貼付剤、プレガバリン内服で疼痛コントロールを行った。第6病日に全粥摂取開始、第9病日に車椅子への移乗可能、第15病日に陽圧換気終了、第23病日に気管切開チューブ抜去となり、第40病日に転院となった。【結論】今回、高齢者の重症胸部外傷に対して早期気管切開を行うことで、肺炎など呼吸器合併症なく、早期より積極的な理学療法介入ができ、ADL低下なく経過良好であった1例を経験した。