[O78-1] MRIによって診断したS状静脈洞溝に沿って進展する小児後頭蓋窩硬膜外血腫の7例
【背景】Sigmoid sinus groove(SSG)に沿って進展する硬膜外血腫による静脈洞の一過性閉塞は小児に特徴的である。受傷直後のCTではSSGに一致した高吸収域を示すため、治療方針の決定に当たっては血栓症との鑑別が重要となる。【目的】SSGに沿って進展する硬膜外血腫によってS状静脈洞の一過性閉塞化をきたした7例を報告し、さらに、MRI所見の特徴を静脈洞血栓との鑑別を中心に考察する。【方法】対象は2016年4月から2018年8月までに当院においてSSGに沿って進展する硬膜外血腫を認めた7例。MR静脈撮影(MRV)を含む急性期のMRI所見の特徴および追跡MRI、MRV所見の変化について、後方視的に検討した。【結果】平均年齢は4.1歳、女児が4例、病側は右4例であった。合併症としては頭蓋骨骨折6例、気脳症1例、脳挫傷1例であった。MRIではT2-WIで硬膜外血腫により内方に圧排されるS状静脈洞のflow voidを5例で認めた。冠状断では、SSGに沿って進展した硬膜外血腫の内側に接して先細りしたS状静脈洞のflow voidが認められ、両者の境界は整で、全体として鎌の刃状を示した。S状静脈洞の再開通が未確認である1例を除き、受傷時のMRVでは患側の横-S状静脈洞描出低下(5例)及びS状静脈洞描出消失(1例)を認めたが、受傷後平均20.2(8-39)日後の追跡MRVで描出は正常化した。これらの所見から、静脈洞の描出低下は静脈洞血栓によるものではなく、血腫の圧迫による二次的な閉塞化と考えられた。治療はいずれも抗凝固療法は行われず、脳挫傷合併の1例のみでグリセオールの点滴静注療法が行われた。入院期間は平均8.4日で、全症例で明らかな後遺症は認めず退院となった。【結語】MRIでは受傷後早期からT2-WIで血腫によって内方に圧排されるS状静脈洞のflow voidが同定されることが多く、冠状断における鎌の刃状所見は血栓症との鑑別に有用であった。一方、MRVによる静脈洞の一過性描出低下を静脈洞血栓と見誤らないよう注意が必要と思われた。適切な治療方針の決定のためには静脈洞血栓症と硬膜外血腫による二次的な静脈洞閉塞化の鑑別は極めて重要であるが、CTのみでは鑑別は困難であるため、受傷後早期のMRI撮影が望まれる。