[O78-4] 安全な腹臥位療法によって救命し得た重症呼吸不全合併不安定型骨盤骨折の2例の検討
【背景】多発外傷管理は問題点が多岐にわたり集学的治療を要し、中でも外傷に合併する重症呼吸不全は管理に難渋することが多い。外傷の多くは受傷後一定期間の安静管理を要するが、一般的に外傷は、胸部外傷だけでなく、長期臥床に伴う無気肺形成などからも比較的容易に呼吸不全に陥りやすい。一方で重症呼吸不全の治療としては、早期離床や、腹臥位などの体位変換が有効とされる。多発外傷に伴う不安定型骨盤骨折は、全身状態の安定化を優先するために、骨折の根治術ではなく創外固定にとどめることが多い。重症呼吸不全合併不安定型骨盤骨折創外固定の腹臥位療法については報告も少なく、一定の見解を得られていない。【目的】今回、不安定型骨盤骨折創外固定の患者の重症呼吸不全に対し、安全に腹臥位療法を行えた2例を経験したので、考察を交え、検討し報告する。【症例1】34歳歳男性、自転車走行中にトラックに接触し受傷した。骨盤骨折を認めたが、全身状態の不安定のため、全身管理目的に一度保存入院となった。無気肺から重症呼吸不全となり、骨盤創外固定、ECMO管理を要した。その後1週間でECMO離脱には至ったものの、肺挫傷からの出血と無気肺から再度呼吸不全に陥った。しかし、主科が二度目のECMOを拒否したので固定具に注意しながら腹臥位を行い、初回で著明な酸素化の改善を認めた。その後経過良好で、受傷後51日目にリハビリ転院となった。【症例2】83歳女性、自動車単独事故にて受傷した。骨盤骨折、肝損傷、多発肋骨骨折、肺挫傷、左大腿骨骨折、両側脛腓骨骨折、左足関節外果骨折、右上腕骨骨折を認めた。全身状態は比較的安定していたことから、大腿骨の髄内釘と骨盤創外固定手術を行い、術後に救急病棟入室となった。術中経過も良好であったため抜管して退室となったが、入院翌日から血圧低下と酸素化不良を認め、挿管管理となった。経過と画像から脂肪塞栓と診断されステロイドパルスを開始したが改善なく、安静管理に伴う無気肺により、重症呼吸不全となった。全身状態に注意しながら、腹臥位療法を行った。数日行い酸素化の改善を認め、14日目に抜管となった。その後経過良好で、37日目にリハビリ転院となった。【結語】重症呼吸不全合併不安定型骨盤骨折の創外固定に対して、一定の条件を満たし、留意点を間違わなければ安全に腹臥位療法を行えると考える。