第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 症例

[O78] 一般演題・口演78
外傷・熱傷 症例02

Sat. Mar 2, 2019 3:20 PM - 4:00 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:津久田 純平(聖マリアンナ医科大学 救急医学)

[O78-5] ガス爆発事故により気管膜様部損傷を来したまれな1症例の手術麻酔と周術期管理

鯉淵 郁也1, 諏訪 潤子1, 浅野 哲2, 古畑 善章3, 諸江 雄太4, 林 宗博4, 斎藤 豊2, 加藤 啓一1 (1.日本赤十字社医療センター 麻酔科, 2.日本赤十字社医療センター 集中治療科, 3.日本赤十字社医療センター 呼吸器外科, 4.日本赤十字社医療センター 救急科)

【背景】爆発事故による気管の圧損傷は極めてまれな外傷で、本邦での文献的報告は1例のみである。気管損傷による呼吸不全はしばしば重篤な経過をとるが、手術麻酔や集中治療室での管理方法が一般的な胸部外傷とは異なり、適切なマネジメントが必要である。【臨床経過】39歳、男性。溶接作業中に、アセチレンガスと酸素の混合ガスに引火し、爆風を顔面に受けた。受傷直後は呼吸苦などの明らかな自覚症状を認めず、業務を継続した。受傷後1-2時間して徐々に気分不良、呼吸困難を自覚し、血痰を認めたため、当院救急外来を徒歩で受診した。精査の胸部CT検査では気管の膜様部に一部途絶を認め、著明な縦隔気腫とあわせて気管壁損傷が疑われた。気管支鏡検査では気管膜様部と左主気管支膜様部の裂創を認めた。明らかな気道熱傷を疑う所見は認めなかった。爆発による気管膜様部の圧損傷の診断で、同日緊急手術の方針となった。手術前、EICUに入室となり、酸素マスクO2 6L/minを開始された。右開胸での修復術が予定されたが、気管チューブによる損傷部の機械的拡大や陽圧換気による影響が危惧されたため、チューブはシングルルーメンチューブを選択し、挿管長を深くして左片肺挿管・左分離肺換気を行う計画とした。実際の挿管時は、気管支鏡を使用して損傷部位を目視で確認しながら、注意深く挿管した。左側臥位として、手術開始。リークテストと外科医の目視により、気管膜様部と左主気管支膜様部の損傷部位が確認された。損傷部はそれぞれ縫合閉鎖され、肋間筋皮弁で被覆された。リークの無いことを確認後、閉創された。術後は挿管のままEICUに退室となった。第2病日、気管支鏡で熱傷などによる気道狭窄の無いことを確認後、早期に抜管された。食事摂取も開始となった。第3病日にEICUを退室。自覚症状は、軽度の嗄声と呼吸苦を術後早期に訴えたが、次第に改善した。フォローアップの気管支鏡検査では修復部位の術後狭窄はごく軽度であった。第14病日に独歩退院した。【結論】爆発による気管損傷というまれな症例を経験したが、挿管時の気管支鏡の適切な使用や、損傷部への陽圧を可能な限り防ぐことで、気管損傷部位の拡大を防ぐことができた。また、全経過を通して、麻酔科医、救急科医、呼吸器外科医、各種コメディカルの連携により、患者の早期退院が可能となった。