[O8-2] 当院PICUで経験した重症百日咳22例の検討
背景:乳児期早期に百日咳に罹患した場合、特に生後2か月以下や肺高血圧をともなう症例の死亡率は高い。体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)による管理が必要となった場合、早期乳児の死亡率は84%と報告されている。白血球増多と生存率との関係性は明確でないが、白血球除去療法が死亡率を下げたという報告がされてきている。目的:当院PICUに入室した重症百日咳症例を分析し、悪化・死亡因子を検討する。方法:2010年3月当院開設以来、PICU入室を要した百日咳症例の診療録を後方視的に検討した。年齢、性別、ICU入室期間、気管挿管期間、転帰に加え、気管挿管、肺高血圧、白血球除去療法、一酸化窒素吸入(inhaled nitric oxide; iNO)療法、ECMO管理の有無を検討した。さらに、白血球数と人工呼吸管理、気管挿管日数との関連を検討した。結果:百日咳症例は全22例(2010年3月-2018年8月)であった。年齢中央値は2か月(0-6か月)、男児は55%であり生存率は91%であった。そのうち気管挿管症例は82%(18/22例)で、肺高血圧・iNO症例は14%(3/22例)であった。また、最大白血球数の中央値は16,630/μL(6,520-80,300/μL)で、Great Ormond Street Hospital(GOSH)のプロトコルに準じて白血球除去療法(交換輸血あるいは白血球除去)を行った症例は2例であった。うち1例はWBC 80,300/μLであり気管挿管・人工呼吸管理を要したが、肺高血圧の増悪なく生存した。1例はWBC 42,190/μLであり、入室当初より肺高血圧が顕在化し気管挿管・人工呼吸管理、iNO吸入療法、ECMO導入を行ったが死亡した。人工呼吸管理の必要性と白血球数との間に有意差は認めなかったが、気管挿管期間が10日を越える症例では、有意に高い白血球数を示した(p=0.02)。ECMO症例は3例で、日齢22から生後6か月(修正4か月)の乳児であった。最大白血球数は21,050/μLから46,300/μLと全例で高値を示した。ECMO症例全例で肺高血圧を認め、iNO吸入療法を行ったが、最終的にECMOとなっていた。veno-venous(VV)ECMOで当初導入を行ったが、肺高血圧の増悪に伴い全例VVからveno-arterial(VA) ECMOへ移行した。最終的に、ECMOを要した3例のうち2例が死亡した。結論:当院PICUに入室した重症百日咳において、白血球数と長期人工呼吸器管理に関連があった。また、肺高血圧症を呈する例では重症化してECMO管理となり、死亡率も高かった。