[O8-3] 抜管前予防的ステロイドの副作用:コホート研究
【目的】American Thoracic SocietyとAmerican College of Chest Physiciansが2017年に発刊した人工呼吸器離脱に関するガイドラインでは、抜管後喉頭浮腫のリスクが高い患者をカフリーク試験で選定し、予防的ステロイドを抜管前に投与することが推奨されている。ガイドライン同様に、我々が同年発表した抜管前予防的ステロイドの系統的レビューでは、ステロイドに伴う副作用はほぼなく、安全であると結論づけた。しかし、11件中6件の研究しかステロイドの副作用に言及していないため、報告バイアスの可能性が残る。今回、抜管前予防的ステロイドを投与された患者における副作用の頻度を記述した。【方法】2013年4月から2018年3月までに同一の三次医療機関の2件の集中治療室に入室し、予防的ステロイドを投与された患者データを用いて、後ろ向きコホート研究を行った。診療医の判断で、Francoisが提唱したレジメン(メチルプレドニゾロン20mgを抜管12時間前から4時間毎に投与し、4回目投与後に抜管する)を用いた。主アウトカムは抜管前ステロイド投与開始後3日以内の副作用とした。対象とした副作用は消化管出血、新規感染症、耐糖能異常(ステロイド投与開始時血糖が180mg/dL以上の場合には血糖上昇、未満の場合には180mg/dLを超える高血糖と定義する)とした。【結果】対象期間に抜管前予防的ステロイドは175名に投与された。少なくとも一つの副作用が137名(79.2%)に確認された。耐糖能異常は130名(74.3%)に見られた。ステロイド投与開始時に血糖正常であった149名中106名(71.1%)に新規高血糖が、 既に高血糖であった26名中24名(92.3%)に血糖上昇が確認された。多変量解析の結果、ステロイド投与開始前3日以内の高血糖が耐糖能異常のリスク因子(OR 2.44:95% CI 1.02-5.83)となり、既知の糖尿病やステロイド開始前の利尿薬投与はリスク因子とならなかった。新規感染症は20名(11.4%)、消化管出血は1名(0.6%)に発症した。ステロイド投与開始後3日以内死亡例はなかった。【結論】抜管前予防的ステロイドの副作用は多い。ステロイドの効果と安全性から適切なレジメンを探る研究が必要である。