[O80-2] 当院 High Care Unitにおける抜管手順の作成
【背景】神戸市中央区の兵庫県災害医療センターで2008年に起きた抜管時の治療ミスによって重い障害が残ったとして,植物状態になった女性(当時34歳)が同センターを運営する日本赤十字社と設置者の兵庫県に損害賠償を求めた訴訟で,神戸地裁は2016年3月29日,同社に約1億2100万円の支払いを命じた.【目的】この判決が医学的に妥当かどうかは議論があると思われるが,この判決の鑑定をもとに,不幸な事故が起こらないように出来る限りの対策を立てるべく,2016年8月に当院High Care Unite(以下HCU)における抜管手順を作成し,2年が経過したので実施状況を報告する.【臨床経過】以下にその手順をしめす.手順の作成に際し,出来るだけ簡便かつ効果的とおもわれる方法を選択した.主治医より抜管の提示があれば,HCU看護師から手順書を主治医へ渡し,主治医と看護師で手順の確認を行う.看護師は輪状甲状靭帯切開のためのキット,再挿管用の物品,再挿管のチューブは現在のものより1mm細いものを準備し2名以上で対応する.その後,1)主治医は意識レベル,呼吸状態,循環動態,咽喉頭の機能などより,抜管可能かどうかの判断をカルテに記載する.2)喉頭浮腫の有無を確認するため,リークテストをおこなう.方法は,カフを抜いてアンビューバッグなどで加圧し,空気の漏れを確認する.3)リークが無い場合には抜管を中止し,麻酔科専門医に相談する.場合によっては,内視鏡などで評価する.4)リークがある場合には,再度カフを注入し,100%酸素にて十分な酸素化を行う. 5)抜管後は気道の確保ができているか,胸郭の動き,呼気の確認などを行う.追加事項:挿管困難症(Cormack 3度以上)の症例では,再挿管のためのtube exchangerを使用する.【結論】手順作成後2年間(2016/8/2から2018/7/11)でのHCUでの抜管件数は48例で,手順に沿って抜管された症例は47例であった.全例特に抜管後に問題はなかった.リークテストでリークのなかった症例は3例で,2例は喉頭の観察にて浮腫がないことを確認後抜管し,1例はtube exchangerを使用して抜管した.ただし,リークテストの結果の記載がない症例が22例あった.医師,看護師によるリークテストのダブルチェック,診療録への記載を徹底することが必要と思われた.