第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

医療事故訴訟・医療安全

[O81] 一般演題・口演81
医療事故訴訟・医療安全02

Sat. Mar 2, 2019 5:30 PM - 6:30 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:山口 弘子(名古屋掖済会病院)

[O81-2] 【優秀演題(口演)】ICUにおける有害事象が死亡率と入院日数に与える影響

相川 玄1, 大内 玲1, 小野 知恵美1, 鳩崎 千絵1, 岡本 麻由1, 松嶋 綾1, 櫻本 秀明2, 星野 哲也3, 井上 貴明3 (1.筑波大学附属病院 ICU, 2.茨城キリスト教大学, 3.筑波大学附属病院 救急・集中治療部)

【背景】
有害事象(Adverse Event: AE)とは、医療による結果あるいは医療が一因となった予期されない身体的障害である。ICUにおけるAEの発生は重症化を招き、患者アウトカムを悪化させると考えられている。しかし、本邦におけるAEの発生頻度に関する調査報告は少なく、AEの発生頻度やAEが患者に与える影響は不明である。
【目的】
当院ICUにおけるAE発生頻度及びAEが28日死亡率、入院期間へ与える影響を明らかにすること。
【方法】
2017年4月から2018年3月の1年間に当院ICU入室した755名のうち、系統的抽出法で抽出された246名を対象に後方視的観察研究を実施した。
Global Trigger Tool(GTT)を使用して、対象患者のICU入室期間中の医療内容についてAEを特定した。看護師2名が独立してカルテレビューを行い、レビュー結果を比較して合意を得た後、医師の最終判定を経てAEの有無を判断した。
主要評価アウトカムはAE発生頻度及び28日死亡率、入院日数にAEが与える影響とした。AE発生群と非発生群について、入院中予後に関する影響を比較検討した。AEの有無における28日死亡率の差をログランク検定にて求めた。また、多変量解析を用いてAEが入院日数を延長させる要因であるかを分析した。
【結果】
患者属性は、平均年齢64±16歳、男性64%、人工呼吸器装着患者割合は52%、重症度を示すAPACHEIIスコアの中央値は13(9-20)であった。ICU滞在日数3.0(2.0-6.5)日、入院日数22.0(13.5-37.5)日であった。
観察期間中、全293件のAEが発生した。51.6%の患者にAEが発生しており、206.2件/1000患者日数、118.7件/100入室患者であった。影響度分類は3aが197件、3bが87件、4aが2件、4bが4件、5が3件であった。
単変量解析において、AEを有する群では有意に重症度が高く、ICU滞在日数、入院期間が長かった。しかし、28日死亡率は各群で有意差は見られなかった(p=0.081)。多変量解析の結果、重症度、年齢、緊急入院の有無で交絡因子の調節をした上で、AEの数は有意に入院日数を延長させる要因であった(p=0.042)。
【結論】
ICU入室患者の半数以上に有害事象は発生していた。また、AEの数は入院日数を延長させる要因であることが明らかになった。