第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O86] 一般演題・口演86
呼吸 症例05

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:大藤 純(徳島大学病院 救急集中治療部)

[O86-6] 食事療法とリハビリテーションが有用であった気管カニューレ管理に難渋した肥満低換気症候群の1例

田中 由基子, 朴 啓俊, 山名 英俊, 河野 元嗣 (筑波メディカルセンター病院)

【背景】肥満低換気症候群の呼吸管理にはCPAPが第一選択だが、今回気管切開後でCPAPが相対的禁忌であったため食事療法とリハビリテーションで治療をおこなった症例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は糖尿病・高血圧の既往のあるBMI36の高度肥満の60歳男性。意識障害で救急要請、救急隊現着時には呼吸停止状態で、補助換気下で当院搬送となった。来院時GCS E1V1M1、HR78、BP112/79、自発呼吸はなかった。気管挿管し、呼吸管理行ったところ、徐々に体動出現し意識清明となった。また、循環障害も換気により比較的速やかに軽快した。ICU入室時は誤嚥性肺炎および無気肺を認めP/F比98だった。翌日より早期離床リハビリテーションを開始し、ICU6病日にはP/F比220まで改善した。気管挿管のまま歩いて車椅子に移動していたが、一回換気量が維持できず、睡眠時には呼吸停止するため14病日に気管切開を行った。表皮から気管前面までの距離が45mmと長く可変式気管カニューレを使用した。鎮痛・鎮静を中止しても、睡眠時の呼吸停止を認めたため、閉塞性SASと中枢性SASの混合型であると考え、中枢性SASの原因検索に頭頸部MRIなどおこなったが有意所見は認めなかった。入院前1ヶ月は体重増加と日中の傾眠、夜間不眠の悪化を認めていたことから肥満低換気症候群と考え、栄養管理とリハビリテーションを継続した。体重減少に伴って、徐々に換気量が増加し、夜間の呼吸停止も認められなくなった。また血圧や血糖コントロールも良好となった。40病日に人工呼吸器を離脱した。表皮から気管前面までの距離も約32mmと短縮したため、スピーチタイプのカニューレを使用してみたが、側孔の位置が気管に合わず肉芽形成したため断念した。保持用カニューレも適合サイズが見つからなかった。BMI28程度となった82病日に気管支鏡で上気道・下気道に問題ないことを確認し、気管カニューレを抜去した。軽度の閉塞性SASは観察されたが、特に問題なく経過し気管孔は閉創した。【結論】今回、気管切開孔のためにNPPVに移行できず、高度肥満のため気管カニューレ管理に難渋した肥満低換気症候群を経験した。早期より離床をはかり筋力を維持した状態で栄養管理したことで呼吸不全だけでなく血糖コントロール、高血圧も共に軽快した。肥満低換気症候群では呼吸管理だけにとらわれず栄養管理・リハビリテーションによる体重管理をおこなうことが最も大切である。