第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 研究

[O87] 一般演題・口演87
循環 研究03

2019年3月2日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:井口 直也(大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学講座麻酔・集中治療医学教室)

[O87-1] 冠動脈バイパス術後のVT/VF発生についての検討

林田 恭子, 松下 努, 増田 慎介, 森本 和樹 (舞鶴共済病院 心臓血管外科)

【背景】冠動脈疾患における心室頻拍(VT)、心室細動(VF)に対して、冠動脈バイパス術(CABG)が有効とする報告は多い。一方で、虚血心筋への再灌流による心筋不応期の不均一化や、術後の著しい心拡大によるtriggered activityの発生がVT出現の機序として報告されている。【目的】虚血性心疾患に対するCABG術後のVT/VFについて検討した。【方法】2014年1月から2018年8月までに当院で単独CABGもしくは複合CABG手術、心室中隔穿孔閉鎖術を施行した144例を対象とし、VT/VFの発生と治療について後方視的に検討した。【結果】術後のVT/VF発生率は15.2%(22例)で、全てCABG成功例であった。7例にアミオダロンを投与し、βブロッカーを除く他の抗不整脈薬の使用はなかった。2例は電気的除細動(DC)の無効、薬剤耐性のVFにより経皮的心肺補助(PCPS)を導入した。VT/VF発生例と、発生しなかった例の比較検討では、吻合枝数に有意差を認めず(吻合枝数:3.0±1.3 vs 3.0±1.5, p=0.465)、左冠動脈主幹部(LMT)高度狭窄、重症3枝病変を有する群と、以外の群でVT/VF発生率に有意差を認めなかった(LMT: 8.3±2.9% vs 17.0±37.8%, p=0.219, 重症3枝病変:16.7±14.8% vs 37.8±35.7%, p=0.395)。心エコー所見では、術前の左室拡張期末期径に有意差を認めた(52.9±7.5 mm 49.9±15.2mm, p<0.05、カットオフ値: 51mm, オッズ比=3.13, AUC=0.650)。難治性VT/VFでPCPSを導入した1例は急性心筋梗塞症例であった。術後4日目にVF出現。アミオダロンの急速投与が著効せず、PCPSを導入した。術後11日目にPCPSを離脱し、翌日IABPを離脱したが、肺炎を併発し、死亡した。他の1例は、心不全治療で数日経過していた非ST上昇型心筋梗塞症例。術後3日目にVFが出現したがDCで回復した。アミオダロンを開始して2日後、VF stormとなりPCPSを導入した。しばらくしてVFは漸減した。術後11日目にPCPSを離脱し、翌日IABPを離脱した。同日VFが出現したため、アミオダロンをさらにloadingした。術後13日目頃よりVFは消失し、生存退院した。【結語】CABG術後のVT/VF発生率は高値であった。術前の心拡大は、CABG後のVT/VF発生のリスク因子となり得た。術前の虚血範囲とVT/VF発生の関係は明らかでなかった。アミオダロンはVT/VF治療の第一選択薬であるが、抑制効果発現に時間を要した場合、速やかに補助循環の導入を検討すべきと考えた。