第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 研究

[O87] 一般演題・口演87
循環 研究03

2019年3月2日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:井口 直也(大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学講座麻酔・集中治療医学教室)

[O87-2] 心臓大血管手術後に発症する心房性不整脈

桑原 史明1, 山田 真史1, 平手 裕市2 (1.名古屋掖済会病院 心臓血管外科, 2.中部大学 生命健康科学部 臨床工学科)

【背景】心臓大血管手術は術後に種々の合併症を発症するが、術後心房細動(POAF)の合併は、術後のストレスや心房筋への手術侵襲を含めて発症しやすい状況であるといわれている。
【目的】本研究では心臓大血管手術後のPOAFの発症率を把握し、それが術後管理に与える影響を把握することにある。
【方法】2013年1月から2015年12月までの3年間、当院で施行された心臓手術および胸部大動脈手術201例。周術期死亡症例と術前より心房細動の既往のあった症例を除外して、150例を対象とした。周術期に心房性不整脈を合併したPOAF(+)群25例(16.7%)、心房性不整脈を合併しなかったPOAF(-)群125例(83.3%)に分けて検討した。
【結果】緊急手術症例はPOAF(+)群4例(16.0%)、POAF(-)群17例(13.6%)で差はなく、術前状態としての肥満、腎機能、高血圧、呼吸機能障害の有無についても有意差は認めなかった。施行した手術については、POAF(+)群は冠動脈9例(36.0%)、弁手術12例(48.0%)、大動脈3例(12.0%)、その他1例(4.0%)に対して、POAF(-)群は冠動脈68例(54.4%)、弁手術32例(25.6%)、大動脈20例(16.0%)、その他5例(4.0%)と、POAF(+)群に弁手術が多い傾向にあった。手術時間はPOAF(+)群348±90分、POAF(-)群は302±94分でPOAF(+)群において有意に手術時間が長かった。
POAF(+)群25例中20例(80%)に抗凝固療法を行った。また投薬内容としてはβ遮断薬23例(92.0%)、Ca拮抗薬7例(28.0%)、ジギタリス製剤5例(20.0%)、アミオダロン10例(40.0%)、I群抗不整脈薬3例(12.0%)であった。24例(96.0%)は発作性の経過をたどり、内1例は退院時もpafを繰り返したまま外来加療となった。1例(4.0%)はそのまま慢性心房細動に移行し、cardioversionにて洞調律に復帰した。
術後経過としては、集中治療室管理日数はPOAF(+)群4.2±4.3日、POAF(-)群5.4±6.1日、術後30日以内退院症例はPOAF(+)群6例(24.0%)、POAF(-)群24例(19.2%)で、ややPOAF(+)例で長期にわたったが、その差は有意なものではなかった。
【結論】心臓大血管手術後の心房細動発症率は16.7%であり、その発症率は長時間の手術症例、特に弁関連手術後に高頻度に発生した。今回の検討では術後集中治療室管理日数、および長期入院について、両群において有意差はなかった。