第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 研究

[O87] 一般演題・口演87
循環 研究03

2019年3月2日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:井口 直也(大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学講座麻酔・集中治療医学教室)

[O87-4] フロートラックによる一回心拍出量測定に圧トランスデューサーの位置変化が与える影響

伊藤 次郎, 川上 大裕, 植田 浩司, 大内 謙二郎, 下薗 崇宏, 美馬 裕之 (神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科)

【背景】循環不全患者に対する輸液療法において, 輸液反応性を予測することは非常に重要である. Passive Leg Raising Test (PLR)は, 体位変換により仮想的な輸液を行い, フロートラック(FloTrac)などの血行動態モニターを用いて測定した一回拍出量(SV)の変化を指標として輸液反応性を予測する方法であり, 心臓血管術後や敗血症による循環不全患者でその有用性が報告されている. FloTracを用いたSVの正確な測定には圧トランスデューサーを右心房と同じ高さに設置することが必要である. PLRを行う際には, 体位変換により必然的にトランスデューサーと右心房の位置関係が変化するが, 過去のFloTracを用いたPLRの有用性を評価した臨床試験では, PLR中のトランスデューサーの位置調節については明記されておらず, トランスデューサーの位置変化がSV測定および輸液反応性の評価に及ぼす影響は不明である.【目的】PLRにおいて体位変換時に生じるトランスデューサーと右心房の位置関係の変化による, 第4世代 FloTrac (G4 FloTrac)のSV測定値の変化を検討する.【方法】単施設前向き観察研究. 2018年7月1日から8月31日の間に当院集中治療室に入室し, G4 FloTracによる血行動態モニタリングを行なった20歳以上の患者を対象とした. 患者をベッド上で45°ヘッドアップの状態から頭部をフラットにした際の右心房の位置の高低差(D cm)を測定した. 安静時にトランスデューサーを右心房の高さに設定したときのSVを含む循環パラメーターをBaselineとして記録し, トランスデューサーを右心房の高さからD cm高い位置に移動した後のパラメーターを20秒間隔で180秒後まで記録した. トランスデューサーの位置変化に伴うSVの変化(ΔSV)を計算し, 輸液反応性の評価に与える影響をΔSV/SVによって評価した.【結果】対象は20名で, 心臓血管外科術後 13例, 敗血症 4例, その他術後 3例. D = 17.5±2.9 cmであり, SVはトランスデューサーを挙上した20秒後から有意な上昇を認め, ΔSV = 11.4±3.7 mlであった. ΔSV/SV = 20±5%であった. 【結論】G4 FloTracを用いたSVの測定は, トランスデューサーと右心房の位置関係の変化により影響を受けた. G4 FloTracにより測定したSVをPLRの輸液反応性の指標として用いる場合に, トランスデューサーの位置が輸液反応性の評価に与える影響については更なる調査が必要である.