[O88-1] 急性心不全患者の死亡率予測における乳酸値の有用性
【背景】急性冠症候群や急性心不全の予後予測因子として初回乳酸値の有用性が報告されており、またショックを伴う急性冠症候群において乳酸値の経時的変化(クリアランス)が予後予測因子としての有用性が報告されている。しかし急性心不全を対象とする乳酸クリアランスの有用性を示す報告は認められない。【目的】急性心不全患者の乳酸値(動脈血)および乳酸値クリアランスと生存率予測における有用性を検討する。【方法】2017年4月から2018年3月までに集中治療室に入室した急性心不全患者を対象とし、入室時および1、6、12、24時間後の乳酸値を測定した。乳酸値クリアランスは、(初回乳酸値-各時間の乳酸値/初回乳酸値)×100で計算した。【結果】急性心不全患者106例(虚血53例、弁膜症22例、心筋症27例、高血圧症12例)が対象となった。入院時乳酸値は17±20 mg/dL、180日死亡は12例に認められた。ROC曲線から求めたCut-off値は12時間後乳酸値が10mg/dL (AUC0.705)、12時間後乳酸クリアランスは9.1% (AUC0.639)であった。このCut-off値を用い乳酸値および乳酸クリアランスに関しKaplan-Meier法で生存率を検定すると各々180日死亡に有意差が認められた。12時間後乳酸値10mg/dlおよび12時間後乳酸値クリアランス9.1%で4群に分け生存率の検討したところ、12時間後乳酸値が10mg/dL以下であっても、12時間後乳酸値クリアランスが9.1%以上であると180日死亡は有意に高値であった。【結論】急性心不全患者に対する乳酸値および乳酸クリアランスは急性心不全生存率の予測に有用であると考えられた。