[O88-3] 急性A型大動脈解離における血清乳酸値上昇の臨床的意義
【背景】循環不全、敗血症など種々の病態において、血清乳酸値上昇は重篤な状態を反映する。本研究の目的は、急性A型大動脈解離における血清乳酸値上昇の臨床的意義を明らかにすることである。【方法】2013年~2018年の間に当院に入院した急性A型大動脈解離患者のうち、到着時心肺停止例を除外した連続52例を対象とした。入院時動脈血ガスで血清乳酸値を測定し、中央値により高値群と低値群に分けた。両群間で患者背景因子、解離の程度、意識障害、ショック、臓器虚血、手術施行の有無、院内死亡などについて比較検討した。【結果】血清乳酸値の中央値は2.5 (1.6-3.9) mmol/L で、乳酸値は重炭酸イオンと負の相関を示した。乳酸低値群 (n=26)と高値群 (n=26)の間で、年齢 (64±15歳 vs 58±14歳)、男性 (58% vs 77%)、非手術例 (19% vs 12%)、ショックあるいは臓器虚血合併例 (15% vs 35%)に有意差を認めなかった。低値群に比べて高値群では、DeBakey II型 (15% vs 0%, p=0.04)、偽腔閉塞型 (38% vs 8%, p=0.008)が少なく、意識障害 (JCS>0) 例 (19% vs 50%, p=0.02)は多かった。院内死亡率は低値群で12%、高値群で23%であった。【結論】急性A型大動脈解離における入院時の乳酸値上昇は、重症度の高い病態を反映し、予後不良のマーカーとなる可能性が示唆された。