[O88-4] 周術期における可溶型AGE受容体(sRAGE)の血中濃度は開心術後心房細動に対する予測因子となりうる
【目的】人工心肺を用いた開心術後心房細動（Postoperative Atrial Fibrillation:POAF）において、AGE受容体（Receptor for AGE：RAGE）を介した全身性炎症反応の関与が示唆されている。そこで、POAFの予測因子にひとつであるP-wave dispersion (PWd)を用いて、RAGEの組織発現亢進に伴って上昇する血中可溶型RAGE（Soluble RAGE: sRAGE）は炎症性バイオ・マーカーとなりうるかどうかを検討した。【方法】当院当科にて人工心肺を用いて心停止下に単独CABGを施行した連続20例を対象とした。麻酔導入時、ICU入室時、術後３日目、５日目で末梢血サンプルを採取し、ELISA法にてAGEs、ｓRAGE、酸化ストレスマーカー（８-OHdG）および炎症性メディエータの血中濃度を測定した。また、術前およびICU入室時における体表12誘導心電図において各誘導でのP波持続時間から、その最大値と最小値の差であるPWdを測定した。【結果】対象とした患者群は、男性14例、年齢（68.3±7.4歳）、大動脈遮断時間（104±13分）、体外循環時間（127±21分）で合併症なく全例軽快退院した。全症例において術前は洞調律で、3例において術後3日目以降にPOAFを認めICU入室時PWDは45msec以上であった。sRAGEはICU入室時にピーク（939.23±767.15pg/dl）となったが、術前AGEｓと相関することはなかった。しかし、ICU入室時PWDとｓICU入室時RAGEは有意に相関（r2=0.6669, p<0.01）していた。【結論】本検討により、術後早期の血中sRAGE濃度はPOAF予測を可能とする有力なバイオ・マーカーとなりうることが示唆された。
