第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

循環 研究

[O88] 一般演題・口演88
循環 研究04

Sat. Mar 2, 2019 3:50 PM - 4:50 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:西田 博(東京品川病院)

[O88-7] 経皮吸収性bisoprorolの開心術前後における血中濃度の検討

篠崎 滋, 細山 祐樹, 千田 あやね, 杉浦 葵, 橋本 真由美, 後藤 綾花, 遠藤 ありさ, 荒木 彩華, 高橋 明日賀, 阿部 美奈子 (石巻赤十字病院 集中治療部)

【背景】 開心術の周術期管理に、β遮断薬は必須の薬剤となっているが、経口摂取ができない術中、術後に使用できるのはこれまでは静注製剤であった。本邦で開発された経皮吸収bisoprorolはその緩徐な吸収性により、経口剤よりも血中濃度が安定していることが明らかになっている。しかし、開心術では、体外循環で血液の希釈、腎排泄の悪化、末梢循環不全が起きるために、経皮的吸収、排泄のバランスについてデータは無い。【方法】当院倫理委員会で承認を受けた後、術前にβ遮断薬を導入されていない連続10例に対して、経皮吸収性ビソプロロールを術前に導入し、体外循環の前後での血中濃度を測定した。導入は、術前6日に1mgで開始し, 術前4~5日に2mg, 術前3日から定常量の4mgを投与した。samplingは、(1)手術開始時、(2)人工心肺開始10分後、(3)1時間後、(4)2時間後、(5)3時間後、(6)ICU帰室時、(7)術翌日朝6時、の7点で行った。測定は、研究機関に委託し、ガスクロマトグラフィー法を用いた。【結果】1例は手術延期したため、11例で採血を行なった。術式は、AVR 5例、MVP,TAP,Maze 1例、AVR,CABG 1例、CABG 2例、LA myxoma, Maze 1例、基部弓部置換1例である。手術開始時には、11例中10例で有効血中濃度であった。1例のみ血中濃度の上昇がなかった。血中濃度の平均はそれぞれ、(1)8.43+/-4.52, (2)8.29+/-4.21, (3)8.61+/-4.98, (4)8.68+/-4.64, (5)9.55+/-4.72, (6)9.50+/-5.44, (7)8.88+/-4.63 (ng/ml)であった。体外循環中の血中濃度は大きな変動は無く、術後もこの傾向が持続した。腎機能障害がある2例では、血中濃度が高かった。平均HRは、導入前75.2(bpm)、術直前63.6であった。平均収縮期BPは、導入前122.0(mmHg)、術直前112.1であった。除外基準に抵触する脱落例は無かった。術後のaf発症は2例あり、平均13hrで自然停止した。【考察】静注製剤のβ遮断薬は、経口摂取ができない周術期に、速やかに血中濃度を上げ、コントロールが容易であるが、反面高価であり、医療経済的に長期使用には向いていない。経皮吸収製剤は、有効血中濃度になるまで4日間を要するが、周術期に安定して血中濃度を維持できることが判明した。術後まで継続使用し、薬剤費も安価であり、臨床的に有用と考えられた。