[O89-1] 劇症型心筋炎に対しImpellaを用いて急性期管理を行った一例
【背景】劇症型心筋炎は,急激な血行動態の破綻により致死的経過をたどるため,補助循環装置を用いて迅速に組織灌流を維持し,破綻した血行動態改善を図ることが必要である.本邦で2017年10月より使用可能となった超小型軸流ポンプのImpellaは左室内圧,容量負荷減少により,既存のIABPやPCPS(VA-ECMO)に比し,低侵襲で生理的な補助循環装置である.劇症型心筋炎の急性期にImpella2.5を用いて管理を行い良好な転帰をたどった一例を経験したので報告する.【臨床経過】特に既往ない62歳女性.X-6日頃から倦怠感を自覚し,X日に前医受診,肝機能異常を認め,急性肝炎が疑われ当院消化器内科を初診.病着後にBP80/ mmHgと血圧が低下し,呼吸困難が増悪したためCCU管理とした.入室時BP 100/57mmHg,HR 120/min,呼吸数39/min,動脈血液ガスでpH 7.481,pO2 141 (P/F ratio 156),pCO2 25.6,HCO3- 18.9,Lactate 14mg/dlと低酸素血症,代謝性アシドーシス(呼吸性代償)所見を認めた.十二誘導心電図は低電位,完全右脚ブロック,血液検査で心筋逸脱酵素上昇,肝機能障害,炎症反応上昇を認めた.胸部レントゲンで肺うっ血,経胸壁心臓超音波検査はびまん性の壁運動低下(EF 23%)を呈していた. 心原性ショックに伴う低灌流所見と判断し,noradrenaline 0.05γ投与開始,気管挿管,人工呼吸器管理を開始した.Swan-Ganzカテーテル検査結果(CI 1.36L/min/m2, PCWP 31mmHg)より左室単独不全と判断し,Impella2.5を右大腿動脈よりアプローチし,左室内に留置,最大ポンプ流量で駆動した.冠動脈造影で冠動脈に有意狭窄は認めず.劇症型心筋炎を疑い右室中隔心筋より生検採取した. Impella導入後,心係数は増加し(CI 1.36->1.87L/min/m2),血行動態安定,LactateはX+5日に基準値上限以下となった.左室壁運動も改善がみられ,X+7日に正常心機能(EF 55%)となった. Impella挿入に伴う重篤な合併症なく,X+8日にImpella離脱,X+10日に抜管,X+12日にnoradrenline投与を中止した.生検採取した心筋の病理所見としては,ウイルス性心筋炎を示唆するリンパ球浸潤を認めた.【結論】劇症型心筋炎は急激に進行する循環不全を補助循環装置を用いて改善させることが,患者転帰に直結する.本症例は劇症型心筋炎に対しImpellaを用いて急性期管理を行うことにより,心原性ショックからの離脱が可能となり,良好な転帰をたどった.