[O9-1] 鋳型気管支炎に対して、集学的治療で救命し得たFontan手術後の1症例
【背景】単心室血行動態患者に対してFontan手術が行われるようになって40年以上が経過し、Fontan術後の患者に遭遇する頻度が増加している。Fontan術後遠隔期合併症として、気管支に鋳型粘液栓を急速に形成する鋳型気管支炎があり、頻度は低いもののFontan循環に影響を与えるため、発症すると致死的である。今回、Fontan術後の患者が鋳型気管支炎によりショックバイタルとなり、体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)補助下に気管支鏡による粘液栓除去を施行し、救命し得た症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は7歳、男児。左心低形成によりNorwood手術、Bralock-Taussingシャント手術、両方向性Glenn手術を経て、4歳時にFontan手術を施行された。1週間前より咳嗽があり、近医で喘息、肺炎として加療されたが改善はなかった。胸部CTにて左主気管支から左上下葉気管支内に塞栓物質を認め、鋳型気管支炎と診断され、当院搬送された。来院時は経鼻カニューラ3L/分投与でSpO2:95%だったが、徐々に酸素化が悪化し、翌日に人工呼吸器管理目的に集中治療室に入室した。気管挿管後、鎮静や陽圧換気の影響により、血圧低下(SBP<50mmHg)、酸素化不良(SpO2:30-50%)を認めた。ドパミン、シルデナフィルを投与したが改善なく、ECMOを導入した。ジャクソンリース回路による用手換気と呼吸介助を行うことにより、徐々に循環動態、酸素化の安定が得られた。同日、気管支鏡による粘液栓除去を行い、酸素化の改善が得られたため、翌日にECMOより離脱した。入室2日目に人工呼吸器より離脱したが、喀痰が多く、再度呼吸状態が悪化し、人工呼吸器管理となった。入室13日目に気管切開術を施行した。シルデナフィル、ヘパリン、抗菌薬の投与、去痰薬内服、理学療法を施行し、喀痰の減少が得られ、入院50日目に独歩退院した。【結論】Fontan術後の鋳型気管支炎は稀であるが、死亡率は30-60%と高率である。粘液栓による窒息の可能性があり、気管支鏡による粘液栓除去を含む、集学的治療が必要である。