第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O9] 一般演題・口演9
呼吸 症例02

2019年3月1日(金) 10:50 〜 11:50 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:中澤 弘一(東京医科大学病院)

[O9-3] 再挿管となった重症筋無力症クリーゼの1症例

杉山 佳奈, 辻本 功弘, 鳥谷部 陽一郎 (津軽保健生活協同組合 健生病院 救急集中治療部)

【背景】重症筋無力症が急性増悪し呼吸管理が必要な状態に至った場合をクリーゼという。重症筋無力症クリーゼに特化した抜管基準はなく、1/4以上が再挿管となるとされている。今回、眼症状、四肢筋力が著明に改善し、呼吸状態が問題ないことを確認して抜管するも、排痰困難となり再挿管となった症例を経験したので報告する。【臨床経過】53歳女性。統合失調症でタスモリン、リボトリール、エビリファイ内服していた。51歳で重症筋無力症と診断された。複視と眼瞼下垂のみで、眼筋型、胸腺腫非合併例として抗コリンエステラーゼ阻害薬内服で外来経過観察されていた。抗AChR抗体は264 nmol/Lと高力価であった。7月頃より嚥下困難、構音障害が出現し、デイケア中にそうめんを喉に詰まらせることもあった。7月31日、嚥下困難を主訴に当院救急外来受診した。来院時、バイタル安定、手引き歩行可能な状態で、高度構音障害、流涎、眼瞼下垂、全方向眼球運動制限、両上肢筋力低下を認め、重症筋無力症急性増悪が疑われた。経過観察中にJCS3桁、顔面蒼白、口唇チアノーゼ出現し、重症筋無力症クリーゼとして挿管、呼吸器装着し、8月1日、HCU入院となった。血漿交換2回、ステロイド、免疫抑制剤で眼症状、四肢筋力低下は著明に改善した。無気肺予防のため、PEEP、リハビリテーション、頻回のサクションを実施し、無気肺、肺炎は認めなかった。抜管前の評価で、覚醒(SAT;spontaneous awakening trial)、呼吸状態(SBT;spontaneous breathing trial、RSBI;rapid shallow breathing index)、上気道閉塞(カフリークテスト)等問題なく、8月6日、抜管するも、球症状は残存しており、排痰困難となって抜管後15分で再挿管となった。さらに血液吸着2回行い、8月9日、再度抜管した。今回は自力排痰可能で呼吸状態は落ち着いており、8月23日、HCU退室した。【結論】眼症状、四肢筋力が著明に改善し、呼吸状態が問題ないことを確認して抜管するも、球症状は残存し、再挿管となった。球症状は抜管前に予測困難だが、覚醒の割にバッキングがほとんどみられなかったことが球症状未回復のサインだったかもしれない。重症筋無力症クリーゼの抜管の際には、球症状残存による再挿管を念頭におく必要がある。