第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

呼吸 症例

[O9] 一般演題・口演9
呼吸 症例02

Fri. Mar 1, 2019 10:50 AM - 11:50 AM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:中澤 弘一(東京医科大学病院)

[O9-4] 硝酸ガスによる化学性肺炎の1例

濱口 拓郎, 富永 直樹, 瀧口 徹, 五十嵐 豊, 萩原 純, 金 史英, 宮内 雅人, 増野 智彦, 横堀 將司, 横田 裕行 (日本医科大学付属病院 救命救急科)

【背景】金属の表面加工や洗浄などの工程で使用される硝酸は有機物や金属に触れることで一酸化窒素、二酸化窒素を含む硝酸ガスを発生する。硝酸ガスによる呼吸器症状は曝露後3~30時間経過してから発生し、急激に悪化して肺水腫にいたる。治療はステロイドを投与した報告が散見されるが、いまだ確立した治療法はない。支持療法として人工呼吸器管理や体外循環が必要となる場合もある。今回我々は硝酸ガス吸入により化学性肺炎に至った症例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は70歳、男性。硝酸鉄を生成する作業現場で排気管のダクトを補修する際、防護マスクをつけずに作業を約10分間行い、硝酸ガスに曝露した。曝露後数時間して発熱、咳嗽、呼吸困難感を認めたため救急要請し、近医へ搬送された。前医で肺炎、呼吸不全と診断され当院へ救急搬送された。当院への搬送時、硝酸ガスへの曝露から8時間が経過していた。来院時、意識清明であったが、頻呼吸と酸素化不良を認めた。胸部単純X線写真では両肺野びまん性に斑状影を認め、胸部単純CTでは両肺野びまん性に粒状影、すりガラス影を認めた。低酸素血症に対して気管挿管下に人工呼吸器管理を開始した。入院時PaO2/FiO2比(P/F比)は350程度であったが、酸素化能は進行性に悪化し入院後12時間ほどでP/F比は150程度まで低下し、体外循環の導入も検討された。入院後、呼吸状態の改善に乏しくP/F比は100-150程度で推移した。胸部単純X線写真では両側肺浸潤影の増悪を認め、ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸窮迫症候群)に至った。第14病日よりARDSに対して、メチルプレドニゾロン 125mg/日3日間を投与開始し、以後プレドニゾロン 30mg/日より徐々に漸減しステロイド後療法とした。ステロイド開始後より呼吸状態は改善し、胸部単純X線写真の所見も改善傾向となり第20病日に人工呼吸器を離脱した。その後呼吸状態の悪化なく経過し第31病日にリハビリテーション目的に転院となった。【結論】本症例では硝酸ガスに曝露後、遅発性に呼吸器症状の増悪が認められた。長期間の人工呼吸器管理でも呼吸状態の改善に乏しかったが、ステロイド治療により呼吸状態の改善を認めた。硝酸ガスへの曝露では早期は症状が軽微であっても遅発性に呼吸器症状が重症化することを念頭に置き対応することが肝要である。