第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

循環 症例

[O90] 一般演題・口演90
循環 症例05

Sat. Mar 2, 2019 5:50 PM - 6:40 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:徳山 榮男(かわぐち心臓呼吸器病院)

[O90-5] 当院における急性腹部大動脈閉塞症3例の治療経験

金本 亮1, 吉田 尚平1, 桜井 日直子1, 新谷 悠介1, 大塚 裕之1, 佐藤 晃2, 飛永 覚1, 有永 康一1,2, 廣松 伸一1, 田中 啓之1 (1.久留米大学 外科学, 2.久留米大学病院 集中治療部)

急性腹部大動脈閉塞症は稀な疾患であるが, Myonephropathic metabolic syndrome (MNMS)の発症率が高く、死亡率も高い。我々は2016年4月~2018年3月の2年間に3例の急性腹部大動脈閉塞症を経験し、いずれも救命・救肢できたので、治療戦略・術後管理について報告する. (症例1) 77歳男性。突然の両下肢運動麻痺にて発症。造影CTで腎動脈下腹部大動脈の閉塞を認め、急性腹部大動脈閉塞症と診断した。発症14時間後に左腋窩動脈-両側大腿動脈バイパス術を行った。また、総大腿動脈からの生食灌流と総大腿静脈からの瀉血を行った。 さらに再灌流前からCHDFを行い、救命・救肢できた。(症例2) 69歳男性。陳旧性心筋梗塞、心室瘤、左室血栓の既往がある。当院で胃癌の術後加療中に突然の両下肢痛で発症した。造影CTで急性腹部大動脈閉塞症と診断した。発症4時間後に両総大腿動脈より血栓除去術を施行した。症例1と同様に再潅流前に患肢動脈からの生食灌流と静脈からの瀉血を行った。帰室後より速やかにCHDFを開始し、救命・救肢できた。(症例3) 70歳女性。慢性心房細動、僧房弁狭窄症、両下肢閉塞性動脈硬化症で当院循環器内科にかかりつけであった。突然の両下肢脱力で発症した。造影CTで急性腹部大動脈閉塞症と診断した。左総大腿動脈より血栓除去術を施行した。右腸骨動脈は血栓除去困難で、両大腿動脈交叉バイパス術を施行した。再潅流前に患肢静脈から瀉血した。瀉血した血中のカリウム値は上昇なく、動脈からの生食灌流は行わず、発症6時間後に再潅流した。術後はCHDFを要さず良好に経過した。急性腹部大動脈閉塞症は塞栓症または血栓症を原因として起こる。血栓症か塞栓症か、側副血行路の有無が予後を左右すると言われる。症例1は造影CTで全身の動脈硬化所見と側副血行路を認め、血栓症と考えられた。再潅流までに要した時間が長く、MNMSが強く危惧されたが、側副血行路の開存、生食灌流と瀉血、早期のCHDFにより良好な結果が得られた。症例2は塞栓症で、側副血行路も存在していなかったが、迅速な対応及び生食灌流と瀉血、CHDFが良好な経過に寄与したと思われる。症例3は慢性心房細動による塞栓症と考えられるが、元々閉塞性動脈硬化症があり、側副血行路が存在していたことに加え、迅速な対応により重症化を免れたと考えられる。再潅流時の工夫と積極的なCHDF、迅速な診断・手術が急性腹部大動脈閉塞症の治療に肝要であると考えた。