第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O91] 一般演題・口演91
感染・敗血症 研究03

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:25 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:滝本 浩平(亀田総合病院集中治療科)

[O91-1] 集中治療室入室後発症した免疫不全疾患が背景にない患者のサイトメガロウイルス腸炎に対する後方視的検討

川上 直樹, 石川 陽平, 磯川 修太郎, 大谷 典生, 石松 伸一 (聖路加国際病院 救急部・救命救急センター)

【背景】サイトメガロウィルス(CMV)は通常幼少期に不顕性感染し、生涯その宿主に潜伏感染し、大部分は免疫不全者で再活性化する。免疫不全疾患が背景にない患者において集中治療室の滞在が再活性化の誘因になる場合があり、集中治療室入室から4~12日の間が最も再活性化しやすいといわれている。集中治療室入室した免疫不全疾患が背景にない患者においてCMV腸炎は見逃されやすく、約89%が入室から診断までに21日以上かかり、約11%が介入の遅れから腸管穿孔、大量下血をきたし死亡しているという報告がある。確定診断は下部消化管内視鏡(CF)による病変の確認と病変部位の生検が必要となる。【目的】聖路加国際病院において集中治療室入室後発症した免疫不全疾患が背景にない患者のサイトメガロウィルス腸炎に対し後方視的に臨床像、基礎疾患につき検討する。【方法】2003年7月~2018年7月までの15年間に聖路加国際病院においてCFによる病理組織診検査結果報告において免疫組織化学染色にてCMV陽性と記載があるもの60例を抽出した。その内後天性免疫不全症候群(AIDS)、骨髄・臓器移植後、自己免疫疾患、悪性腫瘍を基礎疾患にもつ52例を除外した。残りの8例の内集中治療室入室後に消化器症状を呈し、CFが施行された 6例を以下の解析に用いた。【結果】平均年齢は69.5±10.0歳であった。集中治療室入室からCMV腸炎診断までの平均日数は24.2±7.20日であり、3例(50.0%)が入室から診断までに21日以上かかった。消化器症状を呈してから診断までの平均日数は20.3±6.99日であった。1例(16.7%)が大量下血をきたし死亡した。消化器症状の中では水様便が5例(83.3%)で最も高頻度であった。基礎疾患では慢性腎臓病(CKD)の頻度が最も高く5例(83.3%)であった。【結論】免疫不全疾患が背景にない患者においても集中治療室入室後に一元的に説明不能な消化器症状が継続している場合は死亡するリスクも考えCMV腸炎を鑑別に入れ確定診断をつけるため早期にCFによる病変の確認と病変部位の生検を行うべきである。また多施設共同研究などにより更なる症例の集積を行い、治療介入の余地を検討していく必要がある。