第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O91] 一般演題・口演91
感染・敗血症 研究03

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:25 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:滝本 浩平(亀田総合病院集中治療科)

[O91-2] ICU患者に対する定期的サイトメガロウイルス抗原血症検査に関する検討

馬場 彩夏1, 高橋 希1, 竹田 雅彦2, 中田 孝明1, 織田 成人1 (1.千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学, 2.千葉市立青葉病院 救急集中治療科)


【背景】
 サイトメガロウイルス(cytomegalovirus; CMV)感染は,免疫不全患者のみならず集中治療患者にも発生し,ICU滞在の長期化や生命転帰悪化と関連することが報告されている.CMV感染の特異的検査として,本邦では主に抗原血症検査が用いられているが, ICU患者の抗原血症検査の適切な施行頻度に関する検討は十分に行われていない.当ICUでは,2016年4 月より,CMV感染を早期に検出することを企図し,週一回の定期的CMV抗原血症検査を開始している.
【目的】
 週一回の定期的CMV抗原血症検査を開始後,陽性患者数,陽性患者の転帰に変化が認められるか否かを解析することを目的とした.
【方法】
 2016年4月以前は,集中治療医がCMV検査を必要と考えた場合,抗原血症検査(C7-HRP法)を提出した.2014年4月以降は,ICU入室後48時間以上滞在する患者に対して,週一回の頻度で定期的抗原血症検査(C7-HRP法)を提出した.定期的検査開始前後2年間の陽性検体数,陽性患者数,初回陽性までの期間および陽性患者のICU入室期間等について後方視的に比較検討した.
【結果】
 週一回の定期的CMV検査開始前後の計4年間にCMV抗原血症検査を行ったICU患者は417例.平均年齢62±17歳,男性65.9%,平均ICU滞在日数20.4±23日.定期検査開始前後で年齢差は認めなかったが,開始後群で有意に男性が多かった(P=0.03).抗原血症検査提出数は定期検査開始前が184検体に対して開始後は605検体と大幅に増加した.定期検査開始前後で検体陽性率,患者陽性率は有意差を認めなかった(前 vs. 後,検体陽性率21% vs. 22% P=0.76; 患者陽性率 23% vs. 24%, P=0.79).ICU入室から初回検査陽性までの期間は,定期検査開始後は,開始前に比し有意に短縮した(前 vs. 後,23.7±23日vs. 後群14.7±10日,P=0.008).定期検査開始後,CMV陽性患者のICU滞在日数は定期検査開始前に比し有意に短かった 前 vs. 後,45.5±40日vs. 後群31.0±19日,P=0.019).
【結論】
 ICU患者に対し,週一回の定期的CMV抗原血症検査を開始後,CMV陽性検体数・陽性患者数は増加した.ICU入室から初回検査陽性までの期間は短縮し,CMV感染は早期に診断され,CMV感染患者のICU滞在日数も有意に短縮した.週一回の定期的CMV抗原血症検査は有用である可能性が示唆された.