第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O91] 一般演題・口演91
感染・敗血症 研究03

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:25 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:滝本 浩平(亀田総合病院集中治療科)

[O91-5] Stenotrophomonas maltophilia感染症患者における死亡割合の調査

鈴木 俊一郎1, 枦 秀樹1, 太田 哲徳1, 則末 泰博2 (1.東京ベイ・浦安市川医療センター 薬剤室, 2.東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科集中治療部門)

【目的】
Stenotrophomonas maltophiliaStenotrophomonas属のうち、唯一ヒトへの病原性をもつ。この菌は環境から伝播するがPseudomonas aeruginosaに比べ患者に定着し、感染を起こす力は限られているとされる。しかし、ICUにおいて人工呼吸器管理中や免疫抑制患者の日和見感染の病原菌として知られており、死亡率に関係があると言われている。
そこで我々はICU入室中にS. maltophilia感染症と診断された患者の死亡割合を調査した。
【方法】
2015年1月1日から2017年12月31の3年間、東京ベイ・浦安市川医療センターICU・CCUにおいてS. maltophiliaが検出された49例のうち、S. maltophilia感染症と診断され、治療された症例31例の死亡割合について、電子カルテを用いて後ろ向きに調査した。
さらに同期間、同施設においてP. aeruginosaが検出された63例のうち、P. aeruginosa感染症と診断され、治療された症例58例を比較対照症例として、S. maltophilia感染症と死亡の関係を見るためにχ2独立性の検定を行った。
【結果】
S. maltophilia感染症と診断された31例のうち、死亡症例数は22例(71%)であった。
比較対照としたP. aeruginosa感染症と診断された症例については58例のうち、死亡症例数は21例(36%)であり、両群間の死亡割合では有意差が認められた(p=0.002)。
S. maltophilia感染症に対する初期治療薬の内訳は、sulfamethoxazole-trimethoprim26例、minocycline5例であった。
【結論】S. maltophilia感染症の死亡割合はP. aeruginosa感染症の死亡割合に比べ、有意に高かった。
S. maltophilia感染は正常細菌叢や他の細菌を殺菌する非常に広域な抗菌薬の投与に伴い起こるといわれている。
死亡割合の高いS. maltophilia感染を減らすため、抗菌薬適正使用を継続することで、選択圧がかからないようにする必要があると考えられる。
また、S. maltophilia感染症の第一選択の治療はsulfamethoxazole-trimethoprimであるが、副作用として低Na血症などの電解質異常や血小板減少などが報告されている薬剤である。特に低Na血症については約70%で起こり得るという報告がある。
sulfamethoxazole-trimethoprimでS. maltophilia感染症を治療する際は副作用のモニタリングに留意する必要がある。