[O92-1] CT・培養・抗菌薬の順番を変えることで1時間以内の抗菌薬投与100%を実現できるか
【背景】敗血症の診療において抗菌薬の投与の迅速性は2016年の改定でも強調され、1時間以内が目標とされている。しかし、呼吸循環の評価・管理、診断などを並行して行うため達成は容易ではない。【目的】CT撮影前に病歴・診察から診断を行い培養採取と抗菌薬投与までを行う診療プロセスを実践し、早期に抗菌薬投与が行えるように感じられた。今回正式なプロトコール化を検討するにあたり、培養採取とCT撮影、抗菌薬投与の順番が抗菌薬投与までの時間にどのように影響するかを検討した。【方法】後ろ向き観察研究である。救急科が対象期間に血液培養を提出した症例を抽出し、救急科でCT撮影、抗菌薬投与まで行った症例を対象とした。順番は1、培養提出→抗菌薬投与→CT撮影、2、CT撮影→培養提出→抗菌薬投与、3、培養提出→CT撮影→抗菌薬投与の3パターンを抽出し他の順番になっているものは除外した。また、記録の不備などで順番が確かでないものも除外した。対象症例について来院から抗菌薬投与の時間、60分以内の抗生剤投与達成の有無、広域抗菌薬の使用割合、CT撮影での抗菌薬変更の有無を検討した。【結果】抗生剤投与までの時間はCT前に抗菌薬群(12人)では中央値46分(IQR 33.5-55)で、それ以外の群(17人)の中央値64分(IQR55-70)に対して有意差を持って短かった。60分以内の抗菌薬投与達成の割合は、CT前に抗菌薬群92 %対 それ以外の群41 %で有意差を持って達成率が高かった。広域抗菌薬の使用割合はCT前に抗菌薬群55 %対 それ以外の群71 %で有意差はなかった。CT前に抗菌薬群でCT撮影後に抗菌薬を変更した症例はなかった。【考察】CT撮影前に培養採取と抗菌薬投与を行うことで抗菌薬投与までの時間を大きく短縮できる。これにはCT撮影自体の時間の影響だけでなく読影する時間や抗菌薬選択を悩む時間の影響が大きいと思われる。今回CT前に抗菌薬を投与することでのデメリット(広域抗菌薬の増加や抗菌薬の選択間違い)は見られなかったがこれは観察研究であるため正式にプロトコールにしたのちの検討が必要である。【結語】CT前に抗菌薬投与を行うことが1時間の抗菌薬投与に対して有用である。ただしデメリットについては検討が必要である。