[O92-5] 敗血症における体重増加の臨床的意義
【背景】敗血症時の治療において、急性期の過剰輸液は死亡率の上昇に関連することが報告されている。その背景にある制御困難な血管透過性亢進は、臓器不全の一因となりうるが、臨床上、その指標や過剰輸液に関連する因子は明確ではない。【目的】敗血症患者における体重増加が院内転帰に及ぼす影響と、その背景因子を明らかにすること。【方法】本研究は後方視的研究である。対象は2013年1月から2017年12月に当院高度救命救急センターICUで加療した敗血症286例から、15歳以下、4日以内のICU退室、APACHE II score15点未満の症例を除外した216例。患者背景(年齢、性別、乳酸値)、ICU入室後7日間の体重増加率(最大体重-入室時体重/入室時体重×100)と院内転帰との関連を調査し、さらに体重増加に寄与する因子について多変量解析を用いて検討した。敗血症の定義はSepsis-3に準じた。【結果】生存群は188例、死亡群は28例であった。体重増加率は有意な院内転帰関連因子であり(OR 1.080[95%CI:1.036-1.125], p=0.0001)、ROC解析によるカットオフ値は14%であった。重回帰分析において、年齢(β 0.152, p=0.0154)、性別(女性:β 0.147, p=0.0187 )、入室時乳酸値(β 0.156, p=0.0178)およびICU入室後7日間における最低血小板数(β -0.269, p<.0001)が体重増加に影響する因子として抽出された。【結論】敗血症治療時の体重増加は院内での転帰予測に有用で、年齢、性別、乳酸値および経過中の血小板数の関与が示唆された。