[O92-6] 敗血症予後予測因子としての乳酸クリアランスに対する感染臓器別比較
【背景/目的】敗血症に対する初期蘇生において、乳酸クリアランス (lactate clearance: LC = [(初回乳酸値 ー 24 時間後乳酸値)/ 初回乳酸値] × 100)値は治療反応性をみる指標として注目されており予後との相関が知られている。一方でクリアランス値改善のためには一定量の輸液が求められ、過剰輸液もまた呼吸状態や予後に影響する。特に肺炎のような病態では輸液の影響が大きいと予想されるが、感染臓器別にLC 値が与える影響を比較した研究はこれまでになく今回検討した。【対象/方法】2008 年から2017 年まで2 施設に救急搬送された18 歳以上の敗血症患者sepsis 3 基準) を対象に、後方視的にデータを集積した。感染臓器別 (肺、尿路、腹部、その他)に分類し、特徴を比較した。さらに、患者背景を調整し、LC 値が転帰 (院内死亡率、ventilator free days: VFD) に与える影響をそれぞれのグループで検討した。補液の影響が大きいと予想される肺炎群に対してはサブグループ解析を行い非肺炎群と比較した。【結果】325 例 (肺炎: 165, 尿路感染症: 35, 腹腔内感染症: 94, その他: 31) が対象となった。各群で死亡率に有意差は認めなかった (21 % vs 11 % vs 18 % vs 19 %, p = 0.687) 年齢、重症度、腎機能で調整した多変量解析では、非肺炎群において、LC 値は死亡率とVFDの独立した予測因子となった (死亡率: AOR [95 % confidence interval, CI] = 0.974 [0.962 to 0.986; p < 0.001] , VFD: 0.041 [0.020 to 0.063 ; p < 0.001] ) が、肺炎群ではどちらもLC 値との相関を示さなかった。【結語】肺炎による敗血症において、LC 値は予後予測因子とならなかった。LC 値を有効に用いるためには、感染臓器別の評価が必要となる可能性がある。