[O94-1] 子宮留膿腫の穿孔による汎発性腹膜炎の2症例
【背景】子宮留膿腫は、子宮腔内の感染に子宮頸部の狭窄や閉塞が加わって子宮腔内に膿が貯留する疾患である。多くは経膣的なドレナージや抗菌薬投与で治療可能であるが、まれに子宮穿孔し汎発性腹膜炎を合併することがある。子宮留膿腫による穿孔の診断にはCTが有用だが、腹腔内遊離ガス像を呈することも多く、その場合消化管穿孔がまず想起されるため術前の正診率は約20%程度と低い。子宮留膿腫の穿孔による汎発性腹膜炎は、下部消化管穿孔によるものと比べ死亡率は低いとされているが、それでも15-20%と報告されている。本発表では、頻度が低く死亡率が高いとされる子宮留膿腫の穿孔による汎発性腹膜炎の2救命例を報告する。【経過】症例1:66歳、女性、身長153cm、体重47kg。子宮頸がんに対する手術待機中、上腹部痛を主訴に救急受診、CT検査で腹腔内遊離ガス像や液体貯留あり、消化管穿孔による汎発性腹膜炎の疑いで開腹手術となる。しかし消化管に穿孔部位は見当たらず、術中に子宮底部の穿孔を発見、子宮留膿腫による子宮穿孔と診断され、穿孔部の縫縮および腹腔内洗浄ドレナージ術を行った。手術翌日に抜管、昇圧薬は不要となり、その翌日にICU生存退室となった。症例2:69歳、女性、身長143cm、体重75kg。数日前に腹痛と不正性器出血あり前医受診、子宮頸がんの疑いおよび子宮留膿腫と診断された。翌日に血圧低下、子宮留膿腫による子宮穿孔、汎発性腹膜炎、敗血症性ショックと診断され当院へ転送、開腹で子宮修復および腹腔内洗浄ドレナージ術を行った。手術翌日に抜管できたが、肥満の影響もあり数日間のNPPV管理を要した。ICU入室4日目に昇圧薬が不要となり、6日目に生存退室となった。【結論】症例2は術前に子宮留膿腫の穿孔と診断されていたが、症例1は産婦人科医、外科医ともに消化管穿孔の診断で開腹手術となっていた。子宮留膿腫の穿孔による汎発性腹膜炎を、術前に正確に診断することはやはり難しかった。一方、死亡率が比較的高いとされているが、今回の2症例はいずれも数日間のICU滞在で軽快し、生存退室となった。