[O94-3] 妊娠中に感染性心内膜炎(IE)を発症し、帝王切開術後に僧帽弁置換術を行った一例
【緒言】妊娠中のIEは比較的稀であり、母体のみならず胎児に対する影響も考慮した治療が必要となる。またその予後は決して良好とは言えない。今回、帝王切開術後に僧帽弁置換術を行った症例を経験し母子ともに良好な経過であったため、文献的考察も行い報告する。【臨床経過】 症例は34歳、初産女性。妊娠31週頃から38℃台の発熱を認め抗菌治療を開始したが軽快しなかった。また左下肢の痺れと疼痛も出現し歩行困難となったため、精査加療目的にて妊娠38週1日に当院紹介となった。血液検査ではWBC 17200/μl、CRP 13.44mg/dlと炎症高値であり、BNPは318.4pg/ml、血液培養でStreptococcus anginosusが検出された。経胸壁心臓超音波検査では僧帽弁に疣贅を認めIEの診断となった。頭部CTでは右視床の小梗塞を認め、下肢動脈超音波検査では左膝窩動脈に塞栓があり、IEによる随伴症状が疑われた。僧帽弁閉鎖不全は重度で心不全をきたしており手術適応であったが、胎児がいる状態での心臓手術は困難と思われたため胎児の娩出後に心臓手術を行う方針となった。CTRX 1g/day, ABPC 60mg×2/dayを開始し、妊娠38週3日に帝王切開術を先行させ、7日後に僧帽弁置換術を施行した。児は2480g、Apgar score 8/9点と異常所見を認めず、小児病棟へ入院となった。母親は術後経過は良好、術後2日目にICU退室となった。その後は下肢塞栓症に対して加療中である。【結論】妊娠中にIEを発症した場合、妊娠周数や全身状態を総合的に判断した上で治療を考慮する必要がある。当症例では、帝王切開術を先行させ、開心術を行なった。