第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O94] 一般演題・口演94
感染・敗血症 症例05

2019年3月2日(土) 11:05 〜 11:55 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:速水 元(横浜市立市民病院麻酔科)

[O94-4] 腎生検で管内増殖性糸球体腎炎と診断したMoraxella lacunata菌血症の一例

牧野 祐也1, 澤田 奈実2, 島田 早織2, 武藤 智和2, 桑名 司2, 木下 浩作2 (1.国立病院機構 埼玉病院, 2.日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野)

【背景】
Moraxella lacunata菌血症は稀だが重篤な腎障害となるケースが報告されている.腎障害の機序は不明だが,Moraxella lacunata菌血症により緊急透析を要し,腎生検で管内増殖性糸球体腎炎と診断した症例を経験したため報告する.
【臨床経過】
12歳男児.ICU入室9日前に腹痛,下痢,尿量低下,5日前に圧痛を伴う右頸部腫脹と褐色尿,1日前に眼瞼浮腫を認め近医受診,急性腎障害と心電図変化を伴う高K血症(7.0 mEq/L)を認め前医に入院した.内科的治療が奏功せず高K血症が持続し当院ICUへ転院し,ICU day1 に持続的血液濾過透析を行った.ASO ,ASK高値 と低補体血症を認め,溶連菌感染後糸球体腎炎が疑われたが,A群溶血性連鎖球菌抗原迅速検査,咽頭培養共に陰性であった.抗核抗体,各種自己抗体,ウイルス抗体価,ADAMTS13活性検査,マラリアはいずれも陰性であった.ICU day2とday3の血液培養でMoraxella lacunataが陽性となり,Moraxella lacunata 菌血症の診断とした.ICU day3よりアンピシリン/スルバクタムを開始,ICU day9 にセフォチアム(CTM)にde-escalationした.感染巣として結膜炎,関節炎は認めなかった.ICU day8 の経胸壁心エコー,ICU day11の経食道心エコーで疣贅を認めず,ICU day5 の血液培養で菌の陰転化が確認され感染性心内膜炎は否定した.下腿に虫刺症を認めたが感染門戸とは確定できなかった. ICU day 11に腎生検を行い,管内増殖性糸球体腎炎の病理診断であった.ICU day1 からday4 までの透析によりK値の正常化を認め,ICU day15 に一般病棟へ移動した.入院19日目にCTM投与を終了した.免疫学的機序も考慮される腎障害,また尿中蛋白と潜血が持続陽性であり,入院20日目よりプレドニゾロン60 mg/dayの内服を開始した.
【考察】
Moraxella lacunata菌血症は2013年のケースシリーズで13例中2例が腎障害により透析導入しているが腎障害の原因については不詳である.感染を契機に低補体血症を伴い免疫学的機序から糸球体腎炎となる原因菌としてA群溶血性連鎖球菌が代表的であるが,Moraxella lacunataも免疫学的機序による糸球体腎炎をきたす可能性が示唆された.
【結論】
Moraxella lacunata菌血症による腎障害は,管内増殖性糸球体腎炎が特徴である可能性がある.