[O97-3] シンプルかつ安全に運用するためのPCPSシステムの工夫
【背景】経皮的心肺補助装置(以下PCPS)は、迅速かつ容易にセットアップできるシンプルなシステムであるため蘇生手段としても広く使用されている。一方で長期管理のために様々なセンサーや枝回路を設ける施設が多い。【目的】当院では1992年よりPCPSを導入し520例に使用してきた。この間、即応性・移動性・長期管理の安定性を考慮しながら、出血・空気混入・凝血などのトラブルの予防策を講じてきたので報告する。【方法】以下をトラブル対策として実施した。1.送血・脱血回路のカニューレの接続部のエア抜きラインの廃止。2.充填ラインの三方活栓を二活栓に変更。3.回路の短縮化(送・脱血回路各1400mm)。4.人工肺・遠心ポンプホルダーの軽量化(1.4kg)。5.低重心の台車の作成(座面高100mm)。【結果】1の改良によりエア抜きラインからのエア抜きが不要となり、閉め忘れによる出血・空気混入、また血栓形成のリスクが無くなった。2の改良により三方活栓の操作ミスによる空気の引き込みのリスクが無くなった。3の改良により回路内血栓のリスクは少なくなった。4の改良により標準品の4.4kgのホルダーが1.4kgと3Kgの軽量化が図れた。5の改良により駆動装置の座面が500mmから100mmに下げられ、4の改良とも相まって重心が下がり転倒のリスクが少なくなった。【考察】送・脱血回路のエア抜きラインを廃止するために、導入時は回路側から充填液をあふれさせながらカニューレと接続することで回路に気泡を残さないようにした。これによりエア抜きラインからの出血や空気混入、血液停滞による凝血の対策となった。充填ラインは、充填後には確実な閉鎖が求められるため、二方活栓にしたことでサイドポートからの空気の引き込みのリスクは無くなった。枝回路の廃止と回路短縮により充填量を550mlとすることができた。また血液が体外を循環する時間を短くすることができACTを120~150秒で管理することができている。検査時や移動時の装置の転倒は致命的な事故となる。重量を軽くし装置の座面を下げることによりコンパクトで転倒しにくく、駆動装置も含めてストレッチャーに乗せて移動できるようになった。コンパクトであるため患者ケアの妨げにならないため、看護師からも高評価を得た。【結語】PCPSの機動性を活かしまた安全に運用するためにはシンプルでコンパクトにすることが重要と考える。臨床現場でのニーズに応じた臨床工学技士の改良は有用である。