[O98-6] Hybrid ECMO 9例の検討
【背景】近年ECMOは、従来の治療では救命困難な重症呼吸不全や循環不全に対して広く用いられるようになっている治療法である。VA-ECMO(以下、VA-)中の低酸素血症合併例や、VV-ECMO(以下、VV-)中のcardiomyopathyなど循環不全合併例に対する“Hybrid ECMO”は限られた症例で有効と考えられているが、施設毎の施行件数は少なく、十分に検討されていない。【目的】Hybrid ECMOが呼吸・循環動態に与える影響と予後改善に寄与することを示す。【方法】2009年1月から2018年1月までの間に当院でHybrid ECMOを導入した患者を対象に、原疾患やHybrid ECMOの種類と導入理由、治療効果、予後について、診療録より抽出し、後方視的に検討した。【結果】対象期間で該当する症例は9件(VAV-ECMO 6件、VVAV-ECMO 2件、VAA-ECMO 1件)あり、VV-からの移行は4件、VA-からの移行は5件であった。患者背景は、年齢は60歳、APACHE2スコアは33点(平均値)であり、Hybrid ECMOの導入理由はCardiomyopathyの発症や低酸素血症の進行、Harlequin syndromeであった。ECMO離脱率は44%、ICU退室率は33%、28日生存率は33%であった。該当患者の予測死亡率は81%であり、Hybrid ECMOを導入することで、生命予後が改善する可能性がある。ECMO離脱をした群では、APCHE2scoreが非離脱群(離脱できずに死亡)に比して高い傾向にあり(37vs30)、VA-からHybrid ECMOへ移行した群の方がECMO離脱率(60%vs25%)、ICU滞在率(40%vs25%)、28日生存率(60%vs0%)が良い傾向にあった。Hybrid ECMO導入前後では、mBP(59→77mmHg)、アシデミア(pH7.28→7.34)、Lac(3.4→1.9mmol/L、LVEF(15→26%)、catecholamine index(以下 CAI: 40→30)など循環動態が改善傾向にあった。Hybrid ECMO導入前後で循環・呼吸に関する各パラメータの変化を、ECMO離脱群と非離脱群で比較すると、ΔmBP(10vs28mmHg)やΔSpO2(9.5vs14%)、ΔpH(0.057vs-0.016)、ΔLac(-0.2vs0.4mmol/L)、ΔLVEF(32vs2%)、ΔCAI(0vs1.5)、ΔPEEP(15vs 0cmH2O)、ΔFiO2(-0.6vs-0.05)であった。ECMO離脱群でHybrid ECMO導入後、24時間以内のいずれの時間帯においても、各パラメータが改善傾向にあり、導入後の反応性は予後予測因子である可能性が示唆された。また、ECMO離脱群では、Hybrid ECMO導入までの時間が短い傾向にあった(4.8vs8.0hr)。 【結論】Hybrid ECMOは呼吸循環動態を改善し、高い重症度と致死率の患者の予後を改善する可能性がある。