第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

補助循環 研究

[O99] 一般演題・口演99
補助循環 研究02

2019年3月2日(土) 17:00 〜 17:50 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:宮下 亮一(昭和大学病院集中治療科)

[O99-2] 当院のECPRにおける乳酸値減少率および生存率の傾向とECMO管理の検討

森下 和樹, 大谷 英彦, 鏑木 聡, 岡田 直樹, 小林 隆寛, 宮島 敏, 津屋 喬史, 皆川 宗輝 (横浜市立みなと赤十字病院 臨床工学部 臨床工学課)

【背景】循環不全に陥ると嫌気性代謝が亢進し、乳酸値が上昇する。ECPR症例では、ECMOを施行することで循環不全が解除されECMO導入時の乳酸値から低下することが考えられる。
【目的】当院のECPR症例における乳酸値減少率と生存率の傾向を把握し、ECMO管理方法を検討する。
【方法】2012年4月から2017年3月までのECPR症例39例の内、転院搬送、12時間以内に離脱した症例、乳酸値が継時的に上昇もしくは低下しない症例を除外した全20例を対象とした。比較項目は、ECMO導入直後乳酸値、ECMO導入1時間後、2時間後、6時間後、12時間後減少率として、生存退院群と死亡群で比較検討した。ECMO導入直後乳酸値とECMO導入12時間後減少率はマン・ホイットニのU検定(Median)、その他はt検定(Mean±SD)を用いてp<0.05を有意差ありとした。
【結果】ECMO導入直後乳酸値における比較は生存退院群13.3mmol/L、死亡群17.0mmol/L、p値0.14で有意差なし。ECMO導入1時間後減少率は生存退院群39.1(±23.6)%、死亡群18.6(±10.0)%、p値0.026で有意差あり。ECMO導入2時間後減少率は生存退院群46.4(±17.9)%、死亡群27.3(±12.3)%、p値0.012で有意差あり。6時間後減少率は生存退院群67.7(±20.2)%、死亡群46.7(±16.1)%、p値0.021で有意差あり。ECMO導入12時間後減少率は生存退院群82.2%、死亡群67.0%、p値0.051で有意差なし。また、ECMO導入後1時間後減少率において減少率25%未満と25%以上で生存退院群と死亡群で有意差あり(p値0.035)。ECMO導入2時間後減少率において減少率36%未満と36%以上で生存退院群と死亡群で有意差あり(p値0.0072)、ECMO導入6時間後減少率における減少率50%未満と50%以上で生存退院群と死亡群で有意差あり(p値0.029)。
【考察】ECPR症例における高乳酸血症は生存率に影響しないが、早期に循環不全を改善させることが生存退院に繋がることが考えられる。その為、ECMO流量及び自己心拍出量、ヘモグロビン値を常に把握した管理が必要となる。IABP施行下における心拍出量モニタは正確な数値を算出できない為、循環不全時の肺血流指標となるEtCO2を心機能の連続的な評価に用いるが、実際の心拍出量を数値化できない為、超音波エコーによる心拍出量の評価は適宜行う必要があると考えられる。
【結語】当院のECPR症例において、ECMO導入後の乳酸値減少率が生存率に関与することが示唆された。酸素需給バランスを常に考慮したECMO管理を施行することが重要である。