第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

補助循環 研究

[O99] 一般演題・口演99
補助循環 研究02

2019年3月2日(土) 17:00 〜 17:50 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:宮下 亮一(昭和大学病院集中治療科)

[O99-3] 院外心肺停止例に対するECPR導入に要した時間は神経学的予後の推移に関係するか

外間 亮, 宮川 幸子, 村西 謙太郎, 鯉江 めぐみ, 丸山 隼一, 中塩 舞衣子, 杉村 朋子, 石倉 宏恭 (福岡大学病院 救命救急センター)

【背景】本邦において心肺停止(CPA)症例に対してECPR (extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)が導入されたのは1980年代後半であり、その後ECPRの症例数は増え、心肺停止からECPR導入までの時間は短縮してきている。これに伴い、院外心肺停止(OHCA)の生存率は20%程度と予後も改善しているが、同一施設の経年的推移に焦点をあてた報告は少ない。そこで今回、我々はECPRが実施されたOHCA症例について検討を実施した。【対象と方法】対象は、2001年1月1日-2009年12月31日(Early群)、2010年1月1日-2014年12月31日(Middle群)、2015年1月1日-2017年12月31日(Late群)の期間に当施設でOHCAにてECPRが導入された症例とし、各期間で搬入からECPR導入までの時間(導入時間)、ECPRの離脱率、ICU退室時の神経学的予後を後ろ向きに検討した。神経学的予後はCerebral Performance Category(CPC)にて評価した。【結果】登録症例数は、Early群が34例 (平均52.4歳)、Middle群が48例 (平均54.9歳)、Late群が27例(平均58.8歳)であった。ECPR離脱率は、Early群が10例(29%)、Middle群が14例(29%)、Late群が10例(37%)であり、ECPR離脱症例において、原因疾患は急性冠症候群22例(65%)、致死的不整脈6例(18%)、肺塞栓症2例(6%)、電解質異常2例(6%)で、心原性が多く、初期波形は心室細動21例(62%)、無脈性電気活動2例(6%)、心静止3例(9%)と心室細動が半数以上であった。ECPR導入時間は、Early群が37分(IQR:27.3-41.5)、Middle群が25分(18.0-31.3)、Late群21分(17.5-25.5)と有意に短縮していた(p<0.001)。各群のECPR離脱後のCPCの中央値はEarly群が5.0(IQR:2.3-5.0)、Middle群が4.0(1.5-5.0)、Late群が3.5(3.0-4.0)であり、経年的に離脱率は上昇しているが統計学的な有意差を認めず(p=0.82)、CPCに関しても経年的に改善しているが統計学的な有意差を認めなかった(p=0.69)。また、ICUから生存退室した症例(生存群)とICUで死亡した症例(死亡群)で分けると、心肺停止からECPR導入までの時間は生存群46(41.3-55.0)、死亡群57(48.0-74.5) と生存群で有意に短く(p=0.009)、搬入からECPR導入までは生存群26(18.5-35.5)、死亡群25(18.3-33.8)と有意差は認められなかった(p=0.49)。【結論】今回実施した17年間の単施設の検討ではOHCAにおけるECPR導入時間は有意に短縮しているものの、ECPR離脱率、神経学的予後の有意な改善は認めなかった。今後更なる症例の蓄積が必要と考える。