[P1-4] バンコマイシン急速投与によるレッドマン症候群とアナフィラキシーショックは鑑別可能か:症例報告
【背景】バンコマイシン(VCM)の急速投与はヒスタミン遊離によるレッドマン症候群を引き起こす可能性がある。レッドマン症候群とアナフィラキシーショックは臨床所見上類似点が多く、その鑑別には血漿トリプターゼが有用とされる。我々はレッドマン症候群を疑ったが、血漿トリプターゼの上昇からアナフィラキシーショックと診断した症例を経験したため報告する。
【臨床経過】22歳、男性、身長167 cm、体重69 kg。既往歴はアトピー性皮膚炎のみ。前十字靭帯損傷に対して鏡視下前十字靭帯再建術後に化膿性膝関節炎を発症し、全身麻酔下に洗浄・デブリードマンが予定された。
麻酔導入・維持はプロポフォール、レミフェンタニル、ケタミン、ロクロニウムを用いた全静脈麻酔で行い、ラリンジアルマスク(LM)で気道確保した。執刀前にVCM2 gの投与を開始した数分後より頻脈・血圧低下および換気量低下を認めた。LMを抜去し気管挿管したが、換気量は増加せず、呼吸音も聴取しなかった。皮膚所見はアトピー性皮膚炎があり不明瞭であった。収縮期血圧が50台まで低下したためフェニレフリン(0.2 mg×3回)、エフェドリン(4 mg×2回)の間欠的投与およびデキサメサゾン6.6 mg投与を行い、15分程で呼吸循環動態は安定した。VCM2 gが15分程で投与されたこと、比較的軽症な臨床経過からレッドマン症候群を疑った。しかし、VCMによるアナフィラキシーショックの可能性を否定できなかったため、術後は集中治療室に入室し、抗生剤はリネゾリドに変更して治療を継続した。術翌日に集中治療室を退室した。術後32日目に松葉杖歩行で退院となった。後に血漿ヒスタミン(発症時:12.7 ng/mL、発症翌朝:0.99 ng/mL)およびトリプターゼ(発症時:11.2 μg/L、発症翌朝:3.3 μg/L)の上昇が判明しVCMによるアナフィラキシーショックと診断した。
【結論】VCM急速投与によるレッドマン症候群を疑ったが、血漿トリプターゼ上昇が判明しVCMによるアナフィラキシーショックと診断した症例を経験した。臨床症状のみでは鑑別が困難な場合があるため、特にVCM初回投与の際は推奨された投与時間を遵守することの重要性を再認識した。
【臨床経過】22歳、男性、身長167 cm、体重69 kg。既往歴はアトピー性皮膚炎のみ。前十字靭帯損傷に対して鏡視下前十字靭帯再建術後に化膿性膝関節炎を発症し、全身麻酔下に洗浄・デブリードマンが予定された。
麻酔導入・維持はプロポフォール、レミフェンタニル、ケタミン、ロクロニウムを用いた全静脈麻酔で行い、ラリンジアルマスク(LM)で気道確保した。執刀前にVCM2 gの投与を開始した数分後より頻脈・血圧低下および換気量低下を認めた。LMを抜去し気管挿管したが、換気量は増加せず、呼吸音も聴取しなかった。皮膚所見はアトピー性皮膚炎があり不明瞭であった。収縮期血圧が50台まで低下したためフェニレフリン(0.2 mg×3回)、エフェドリン(4 mg×2回)の間欠的投与およびデキサメサゾン6.6 mg投与を行い、15分程で呼吸循環動態は安定した。VCM2 gが15分程で投与されたこと、比較的軽症な臨床経過からレッドマン症候群を疑った。しかし、VCMによるアナフィラキシーショックの可能性を否定できなかったため、術後は集中治療室に入室し、抗生剤はリネゾリドに変更して治療を継続した。術翌日に集中治療室を退室した。術後32日目に松葉杖歩行で退院となった。後に血漿ヒスタミン(発症時:12.7 ng/mL、発症翌朝:0.99 ng/mL)およびトリプターゼ(発症時:11.2 μg/L、発症翌朝:3.3 μg/L)の上昇が判明しVCMによるアナフィラキシーショックと診断した。
【結論】VCM急速投与によるレッドマン症候群を疑ったが、血漿トリプターゼ上昇が判明しVCMによるアナフィラキシーショックと診断した症例を経験した。臨床症状のみでは鑑別が困難な場合があるため、特にVCM初回投与の際は推奨された投与時間を遵守することの重要性を再認識した。