第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

ショック

[P1] 一般演題・ポスター1
ショック01

2019年3月1日(金) 11:00 〜 11:50 ポスター会場1 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:後藤 安宣(市立奈良病院集中治療部)

[P1-5] 当院における5年間の周術期薬剤性アナフィラキシーの発生状況と治療の検討

清川 聖代, 中澤 弘一, 今泉 均, 沖田 綾乃, 齊木 巌, 長倉 知輝, 関根 秀介, 内野 博之 (東京医科大学 麻酔科学分野)

アナフィラキシーの周術期発症は致死的になりうる重大な合併症である。当院で5年間に発症した周術期薬剤性アナフィラキシーの発生状況、治療/予後について、ICU入室症例を対象に後方視的に検討したので報告する。【対象と方法】2013年から5年間の注射剤によるアナフィラキシー発症のICU入室症例を対象に、麻酔記録、ICU入室記録とインシデントレポートを基に、発症時期、被疑薬、覚知から治療開始までの時間、治療薬剤投与の有無と量、発症後の細胞外液投与量、新たな気管挿管の有無、予後と共に、ICU滞在時間と治療に関連するパラメータ、挿管時間との相関を調べた。【結果】1)発症頻度:麻酔科管理33,415例のうち9例(0. 026%)、局所麻酔19000例のうち2例(0.011%)で、ショック発症が10例、気道内圧上昇が2例、SpO2低下(≦92%)が2例、アナフィラキシー重症度は全例Grade3、年齢は40±19歳、男4例、女7例、術前βブロッカー使用は2例であった。2)発症時期と被疑薬:入室~麻酔導入時が5例(46%)、麻酔導入後~手術開始時が3例(27%)、手術終了時が2例(18%)、麻酔覚醒時が1例(9%)、被疑薬は抗生剤が6例(55%)、ロクロニウムが3例(27%)、アセトアミノフェンが1例(9%)、スガマデクスが1例(9%)であった。3)覚知から治療開始までの時間:血圧低下(収縮期血圧<80mmHg)または呼吸異常覚知からアドレナリン投与まで平均15±10分であった。4)治療薬:ショック対応としてアドレナリン使用はショック全10例中7例(70%)で、投与回数は平均2.0回、総投与量は平均0.35mgで,ショック発症後の推定細胞外液投与量は平均1200±606mlであった。ステロイドは91%、H1blockerは64%に投与されていた。新たに気管挿管されたのは0例、術後人工呼吸継続は7例で、全例1PODまでに抜管、2PODまでにICUを退室した。血圧低下時間とICU入室時の血中乳酸レベル、ICU滞在時間との間、総細胞外液輸液量とICU滞在時間・挿管時間との間にはいずれも相関を認めなった。全例独歩退院した。【結語】術中は覆布のため皮膚所見が観察しづらく、麻酔薬により意識の確認ができず、循環抑制も重なるため、アナフィラキシーの診断/治療が遅れやすい。周術期のアナフィラキシーの頻度は高くないものの、効果的予防策がないため、抗菌薬や筋弛緩薬/拮抗薬、消炎鎮痛薬など薬剤投与時全てで皮膚所見や呼吸循環系変化に注意が必要である。