[P1-6] 敗血症性ショックに対する持続的血液濾過透析早期導入が循環動態に与える影響
【背景】敗血症性ショックに対する急性血液浄化療法の導入基準や施行方法など、標準化されたものは存在しない。J-SSCG2016では腎補助を目的とする場合を除き、急性血液浄化療法の早期導入は行わないことを弱く推奨しているが、これは「死亡率」、「慢性透析への移行」をアウトカムとした結果である。急性血液浄化療法の早期導入が循環動態に与える影響の報告は少ない。【目的】敗血症性ショックに対して持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration;CHDF)の早期導入が循環動態の安定をもたらすかどうか、ICU入室から72時間までの推移を調査した。【方法】後ろ向き観察研究。2014年4月1日から2017年3月31日までに当院ICUにて、Sepsis-3の定義を満たす敗血症性ショックで、CHDFを導入された40名を対象とした。CHDF条件は血液流量:80ml/min、透析液流量:500ml/hr、濾液流量:600ml/hr、補液流量:100ml/hr、抗凝固薬:ナファモスタットメシル酸塩が基本であり、濾過膜は全例Polymethylmethacrylate(PMMA)膜を使用していた。入室6時間以内にCHDFを導入した群を早期群(n=24)、それ以降に導入した群を後期群(n=16)と分類した。調査項目は入室時、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後の平均動脈圧、ノルエピネフリンの使用量(μg/kg/min)、カテコラミンインデックス(catecholamine index;CAI)、乳酸値、28日生存率を比較した。統計学的解析はt検定、χ2検定、Mann Whitney U検定を使用し、有意水準を0.05未満とした。【結果】両群においてSOFA scoreも含めて、入室時の調査項目に有意差を認めるものはなかった。循環動態の推移として、早期群において72時間後のノルエピネフリンの使用量が有意に低下した(0.02 ± 0.03 vs 0.06 ± 0.06, p=0.043)。CAIは早期群において12時間後(9.8 ± 6.3 vs 16.0 ± 8.9, p=0.015)、24時間後(8.4 ± 6.0 vs 14.1 ± 7.2, p=0.013)、48時間後(6.1 ± 5.5 vs 12.1 ± 7.6, p=0.012)、72時間後(3.6 ± 4.1 vs 8.8 ± 8.7, p=0.02)で有意に低下していた。各入室後時間での平均動脈圧と乳酸値、28日生存率は両群で有意差は認めなかった。【結論】敗血症性ショック症例に対するCHDFの早期導入は、28日生存率には影響は及ぼさなかったが、12時間以降の循環作動薬使用量を減少させる可能性が示唆された。