第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P10] 一般演題・ポスター10
血液・凝固 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:巽 博臣(札幌医科大学医学部集中治療医学)

[P10-1] APTT延長を見落としてはいけない―後天性血友病の2症例―

山嶋 誠一, 谷本 圭司 (市立岸和田市民病院 麻酔科)

【背景】
後天性血友病は悪性腫瘍や自己免疫性疾患などに合併することが知られている。抗第VIII因子自己抗体の産生により第VIII因子活性が低下し、出血症状を呈する。発症頻度は100万人に1人と言われ、非常に稀な疾患であり、不幸な転帰を辿る症例も報告されている。今回、我々は後天性血友病の2症例を経験したので報告する。
【臨床経過】
(症例1)71歳、男性。類天疱瘡の治療中に症状増悪を認め、ステロイドパルス治療目的に入院した。入院5日目、口腔内から突然出血し呼吸苦を訴えたため、気管挿管しICUで経過観察となった。貧血が進行し、赤血球製剤、血漿製剤を輸血したが、出血コントロールに難渋した。血液検査でAPTT 111.2秒、112.4秒、109.8秒と連日延長を認め血液内科にコンサルトし、第VIII因子活性が1%で抗VIII因子抗体が検出されたため、後天性血友病と判明した。遺伝子組換え活性型凝固第VII因子(rFVIIa)によるバイパス療法を繰り返し行い、止血を得た。その後、免疫抑制療法を行い寛解した。
(症例2)69歳、男性。空腹時の心窩部痛、食欲不振、体重減少を主訴に近医を受診し、精査の結果、巨大肝細胞癌と診断された。当院消化器外科で肝臓部分切除術が予定された。手術前日に麻酔科の術前診察で血小板数43.4万/μL、PT(INR) 0.90、フィブリノゲン492.0mg/dL、ATIII 134.6%であったが、APTT 80秒と延長を認めた。担当した麻酔科医が凝固因子異常を疑い、手術を延期した。数日後、第VIII因子活性が2%で抗VIII因子抗体が検出されたため後天性血友病と診断された。周術期に胃癌、大腸癌を背景として後天性血友病を発症した報告例はあるが、術前検査で肝癌に合併した後天性血友病を診断した報告ははじめてである。APTT延長を見落とし手術を実施すれば、止血困難で重篤な出血を来していた可能性があった。
【結論】
出血傾向を伴う悪性腫瘍や自己免疫性疾患の患者でAPTTが延長している症例、術前検査でAPTT延長のみを認めた場合は後天性血友病を疑う必要がある。