[P100-1] 集中治療室滞在時の記憶の実態調査
【はじめに】集中治療室退室患者は、集中治療後症候群として精神症状を呈している。その原因の一つに、集中治療室滞在時の記憶の欠落や非現実的な体験など記憶のゆがみとの関連性が指摘され、人工呼吸器装着患者では、特にそれらを認めやすいといわれている。救命センターに搬入される患者には、人工呼吸器装着患者が多く、退室後に記憶の欠落や妄想的記憶を認めていると考えた。今回の調査では、集中治療室滞在時の記憶にゆがみが生じているかを明らかにする。【倫理原則の遵守】所属施設の倫理委員会の承認を得た。【研究方法】調査対象は、2017年7月~2018年6月に集中治療室搬入となり、24時間以上人工呼吸器管理をし、退室時に意識レベルが清明で、退室後に同意が取れた患者11名。集中治療室滞在時の記憶はICU Memory Toolを参考に作成した質問紙、抑うつや不安などの精神症状はHAD尺度を用いて、集中治療室退室2日目に半構成的に調査した。集中治療室での状況は、電子カルテより情報収集した。得られたデータは記述統計を用いて分析した。【結果】 対象者は、男性7人、女性4人、平均年齢66.6±8.97歳であった。人工呼吸器装着期間6.7±4.3日、鎮痛剤の使用は10名、鎮静剤はデクスメデトミジン6名、プロポフォール9名であった。集中治療室滞在時がCPOT 0点でICDS 4点以上は6人であった。滞在時の記憶の完全な欠落は2名で、他の9名では記憶の一部欠落を認めていた。記憶が完全に欠落した患者では、不安を認めたが、性別、抑制以外の共通点は認めなかった。妄想的記憶を認めたのは5名で、うち4名はICDSC 4点以上であった。妄想的記憶を認めた5名のうち4名では、精神症状を認め、妄想的記憶の内容では「拷問を受けた。手を縛られていた」「会社の人が来た」等があった。【考察・結語】先行研究と同様に疾患による関連性はなく、人工呼吸器管理が、記憶の欠落や妄想的記憶など記憶のゆがみの要因の一つとなり、不安や抑うつなどの精神症状を引き起こしていることが示唆された。特に、鎮静剤やせん妄などの認知機能障害と妄想的記憶の関連性がいわれるように、ICDSC4点以上の患者に妄想的記憶がみられ、さらに精神症状引き起こしている傾向にあった。救命センターでも、集中治療室滞在時に人工呼吸器を装着し、せん妄状態にある患者では、より妄想的記憶を引き起こし、集中治療室退室後症候群の一つである精神機能の低下をきたしていると推察された。